GDG

事業承継コンサルとは?専門会社・専門家の役割・費用・失敗しない選び方-企業成長支援- GDG

MAGAZINEマガジン

事業承継 # M&A・PMI# 事業承継計画# 企業価値向上# 後継者# 従業員承継# 株価評価

事業承継コンサルとは?専門会社・専門家の役割・費用・失敗しない選び方

更新日 : 2025.08.27

長年、人生を捧げて守り抜いてきたこの会社を、自分の代で終わらせるわけにはいかない。従業員とその家族の生活もかかっている。しかし、誰に、何を、どう相談すれば…。

事業承継は、すべての経営者が必ず直面する重大な経営課題です。しかし、その重大さゆえに、一人で悩みを抱え込み、最初の一歩を踏み出せずにいる経営者の方も少なくありません。事業承継には財務税務法務など専門的な知識が必要で、どのように進めればよいか悩んでいる経営者の方も多いのではないでしょうか。

そこで役立つのが事業承継コンサルです。本記事では、事業承継コンサルタントとは何か、その役割やサービス内容・費用から、語られることのない「失敗事例」、信頼できるパートナーの見極め方まで分かりやすく解説いたします。大切な会社のバトンタッチを円滑に成功させるためのヒントとしてぜひお読みください。
まずはどんな相談先があるのかを知りたい方は、事業承継の相談先比較記事をご覧ください。

【この記事で分かること】
・ 事業承継コンサルとM&A仲介や税理士との違い
・ 信頼できるパートナーを見極めるチェックリスト
・ コンサル選びで避けるべき5つの失敗パターン
・ 公的補助金を活用して費用を抑える方法

監修者

監修者の写真

宇納 陽一郎

グランド・デザイニング・グループ代表。早稲田大学卒業後、野村證券にて営業・投資銀行業務に従事した後、日清食品にて経営企画・M&Aに従事。その後、PE投資会社にて複数社での事業承継および新体制構築を経験。経営や事業承継の実体験を活かした事業承継支援を提供。㈱ウォーターフロント代表取締役、㈱ナルネットコミュニケーションズ取締役等を歴任。

事業承継コンサルとは?その役割と必要性

事業承継コンサルとは?

事業承継コンサル(事業承継のコンサルティング)とは、企業の事業承継(会社の経営を後継者に引き継ぐこと)が円滑に進むよう、専門的な立場から手続きや計画策定のアドバイス・サポートを行う専門家(またはコンサルティングサービス)です。

親族内で後継者に引き継ぐ場合はもちろん、親族以外の社員への承継や第三者への譲渡(M&Aによる承継)まで、様々なケースに対応した支援を行います。事業承継コンサルは、経営者の良きパートナーとして、現状分析から計画立案、実行のフォローまで一貫して伴走し、会社のスムーズな世代交代を実現する役割を担います。

中小企業に事業承継コンサルが必要な理由

中小企業の多くでは、社内に事業承継の専門知識を持つ人材がいないため、いざ事業承継を進めようとしても何から手を付ければよいかわからないケースが少なくありません。また、後継者が決まっていない企業も多く、親族内承継が難しい場合には、第三者への承継も視野に入れる必要があります。

事業承継の手続きは複雑で、準備不足や知識不足から進め方を誤ると、親族間のトラブル過大な税負担経営の混乱など大きなリスクを招きかねません。実際、中小企業では半数以上が後継者不在とも言われており、専門家のサポートなしに円滑な承継を成し遂げるのは容易ではありません。

こうした背景から、事業承継コンサルの存在意義があります。専門知識を持つコンサルタントに相談すれば、事前に課題を洗い出し適切な対策を講じることができ、トラブルを未然に防ぎながら計画的に事業承継を進められます。中小企業の経営者にとって、信頼できる事業承継コンサルは心強い味方と言えるでしょう。

事業承継コンサルの支援内容とあわせて、磨き上げによる企業価値向上の方法 も確認しておくと効果的です。

事業承継コンサルの支援内容とサービス

事業承継コンサルは、事業承継に関する幅広いサポートを提供します。主な支援内容として、以下のようなサービスが挙げられます。

事業承継計画の策定支援

スムーズな事業承継を実現するためには、事業承継計画の策定が欠かせません。事業承継コンサルは、まず会社の現状を詳しく把握し、事業用資産や株式の評価、後継者候補の状況などを分析します。
その上で、最適な承継方法(親族内承継・従業員承継・第三者承継など)の検討、後継者育成の方針、株式や事業資産をどう引き継ぐか等、具体的な計画を立てる支援を行います。

経営者のご意向や会社の将来ビジョンを踏まえ、承継のタイミングや進め方を明文化した計画書を作成することで、関係者間の認識を共有し、承継準備を着実に進めることができます。

事業承継全体については 事業承継ガイド に整理しています。

財務・税務戦略のアドバイス

事業承継において大きな課題となるのが、会社の財務面や承継時の税金対策です。事業承継コンサルは、公認会計士や税理士と連携しながら、財務戦略と税務戦略の両面で専門的なアドバイスを提供します。例えば、自社株評価の算定や株式の分割・集約方法の検討、後継者に株式を譲渡・贈与する際の最適なスキーム設計、相続税・贈与税の節税策などが挙げられます。

特に、事業承継時には多額の相続税が発生するケースもありますが、事前に税務対策を講じたり、後述する事業承継税制を活用したりすることで、税負担を大きく軽減できる可能性があります。財務・税務の専門知識に基づく戦略的な助言により、承継後も会社の財務基盤を安定させ、後継者が安心して事業を引き継げる環境を整えます。

M&A・第三者承継のサポート

後継者が社内や親族内にいない場合、第三者に事業を譲渡するM&Aによる事業承継も選択肢となります。事業承継コンサルは、そうした第三者承継を検討する際の支援も行っています。
具体的には、買い手となり得る企業や個人を探すマッチング、自社の企業価値評価(株価算定)、譲渡条件の交渉、買い手候補によるデューデリジェンス(資産・財務調査)の対応、契約書の整備など、M&Aプロセス全般をサポートします。

専門家のネットワークを活用し、条件に合った譲受先候補を提案してくれるケースもあります。M&Aは専門的な手続きが多く、自社のみで進めるのは困難ですが、コンサルタントの支援により適切な条件で迅速に話をまとめやすくなります。結果として、事業を託せる相手を見つけやすくなり、企業の存続と発展につながる承継を実現できるでしょう。

後継者育成・承継実行のフォロー

事業承継コンサルの支援は、計画策定や専門分野のアドバイスに留まりません。実際に承継を行う段階まで、きめ細かなフォローをしてくれるのも大きな特徴です。まず、後継者が決まっている場合には、その後継者育成をサポートします。新しい経営者となる人が必要な知識やスキルを身につけられるよう、研修プログラムの提案やメンター役としての助言を行います。

また、経営権の移行期には、現経営者から後継者への経営ノウハウや人脈の引き継ぎが円滑に進むよう支援します。さらに、いよいよ計画を実行に移す段階では、贈与・譲渡や役員変更等の各種手続きについて実務面でサポートします。司法書士や弁護士などが必要な場合には適切な専門家を紹介してくれることもあります。承継完了後も一定期間は新体制の経営を見守り、必要に応じて助言を行うなど、事業承継が最後まで滞りなく完了するよう寄り添ってくれるのが、プロのコンサルタントに依頼する心強さです。

事業承継コンサルの流れと進め方

では、実際に事業承継コンサルに相談すると、どのような流れで支援が進むのでしょうか。
一般的な進め方の一例をご紹介します。

事業承継の進め方 – 中小企業庁の指針に沿った5つの公式ステップ

事業承継は、思い立ってすぐにできるものではありません。中小企業庁のガイドラインでも示されている通り、5つのステップで計画的な準備が必要です。

Step1:準備の必要性を認識する(承継の5~10年前)

まずは経営者自身が「いつ、誰に、どのように」事業を引き継ぐのかを考えることから始まります。自社の現状と将来を冷静に見つめ、事業承継を重要な経営課題として認識します。

Step2:経営状況の把握(見える化)

会社の強み・弱み、財務状況、組織体制、知的資産(技術、ノウハウ、ブランドなど)といった経営資源を客観的に把握し、整理します。

Step3:経営改善(磨き上げ)

磨き上げは、「見える化」された課題を解決し、収益力を高め、企業価値を向上させるための取り組みです。後継者がスムーズに経営を引き継げるよう、組織体制の整備や属人化している業務の標準化なども行います。

Step4:事業承継計画の策定

誰に(後継者)、何を(株式、資産)、どのように(承継方法、時期)引き継ぐのかを具体的に定めた「事業承継計画」を作成します。この計画書は、関係者間の共通認識を形成し、円滑な実行を促すための羅針盤となります。

Step5:承継の実行

事業承継計画に基づき、株式の譲渡や相続、経営権の移譲などを実行します。M&Aの場合は、最終契約の締結やクロージング手続きを行います。承継後も、後継者が安定的に経営できるよう、必要に応じて伴走支援を続けます。

事業承継5つのステップ

事業承継コンサルタントとの初回相談から計画策定までのプロセス

まずは初回相談で、経営者の現状の悩みや希望をヒアリングします。コンサルタントは会社の事業内容や財務状況、株主構成、後継者候補の有無などを確認し、課題を洗い出します。次に、現経営者や関係者へのヒアリングや資料分析を通じて、会社の現状診断を行います。この段階で、事業承継における課題(例:後継者不在、相続税負担、事業の将来性など)と解決策の方向性が見えてきます。

その後、経営者と相談しながら事業承継の方針を決定します。親族内で引き継ぐのか、社内昇進者に任せるのか、第三者に譲渡するのかといった大枠の方針に加え、後継者候補がいる場合は育成計画も検討します。最終的に、承継方法やタイミング、準備すべき施策をまとめた事業承継計画書を策定します。
この計画書には、株式や資産の移転方法(贈与・売買・MBOなど)、必要となる税務・法務対応、スケジュール、関係者の役割などが盛り込まれます。こうして承継完了までのロードマップができることで、経営者も具体的なイメージを持って準備に取り組めるようになります。

計画の実行と承継完了までのサポート

策定した事業承継計画に基づき、いよいよ計画の実行段階に移ります。事業承継コンサルは、計画通りに手続きが進むよう経営者と後継者をサポートします。

親族内承継の場合であれば、贈与契約書や株式譲渡契約書の作成、役員変更の登記申請、相続が発生する場合の相続手続きなど、一連の法務手続きにおいて専門家(司法書士・弁護士・税理士等)と連携しながら支援します。また、株式承継に伴う納税猶予制度(事業承継税制)の適用を受ける際には、必要書類の準備や行政への申請手続きについて助言を受けることもできます。

第三者への承継(M&A)の場合には、買い手候補との交渉や条件調整、最終契約の締結まで伴走します。意向表明書や基本合意書の取り交わし、デューデリジェンス対応、最終契約書のチェックなど、M&Aプロセスの各段階でプロがサポートしてくれるため、当事者同士だけでは難しい取引も安全に進められます。

こうした実行フェーズでの支援によって、計画倒れになりがちな事業承継も最後までやり遂げやすくなります。承継完了(新社長への正式な経営権移譲)まで、必要に応じて適切な手を打ちながら導いてくれるのがコンサルタントの役割です。経営者にとっては心強い伴走者がおられることで、不測の事態にも落ち着いて対処でき、安心してバトンタッチの日を迎えることができるでしょう。

承継方法ごとの特徴比較
比較項目 親族内承継 従業員承継 第三者承継(M&A)
スピード 時間がかかる(後継者育成に時間を要する) 比較的早い 最も早い可能性がある
コスト 相続税・贈与税が課題 株式買取資金の調達が課題 仲介手数料等が発生
感情的ハードル 親族間の調整が複雑 従業員の理解形成が必要 「身売り」への抵抗感が生じやすい
企業文化の維持 最も維持しやすい 比較的維持しやすい 大きく変わる可能性がある
まずは無料相談してみる

事業承継コンサルを利用するメリット

次に、事業承継コンサルを活用することによって得られる主なメリットを見てみましょう。

専門知識によるトラブル防止と円滑化

事業承継は一度きりの大仕事であり、経験豊富な経営者であっても初めて直面するケースがほとんどです。そのため、思わぬ落とし穴に気づかず進めてしまうリスクがあります。
事業承継コンサルは法律・税務・財務の専門知識と過去の支援実績に基づき、事前に問題点を洗い出して適切な対策を講じます。例えば、後継者が複数いる場合の株式や財産の分配ルール、親族以外への承継時の社内外調整、相続発生時の紛争防止策など、見落としがちなポイントもしっかりケアします。
その結果、承継時のトラブルを未然に防ぎ、計画通りにスムーズな事業引継ぎを実現できるのです。専門家によるチェックとサポートがあることで、経営者は安心して承継準備を進められます。

最適な承継スキーム提案

事業承継の方法は企業によって様々で、正解は一つではありません。事業承継コンサルは、各社の状況や経営者の意向を踏まえて最適な承継スキームを提案してくれます。例えば、親族内に後継者がいる場合でも、あえてMBO(経営陣による買収)や社外からの招へいを組み合わせるケース、あるいは事業の一部譲渡と一部継承を並行して進めるケースなど、その会社にとってベストな形を模索します。税負担を最小化し事業価値を最大限に守る手法や、従業員や取引先への影響を考慮した円滑な承継方法など、自社では思いつかない選択肢も専門家ならではの視点で示してくれます。これにより、経営者はより良い条件と形で事業を次世代に引き継ぐことが可能になります。自社に合った承継プランを手に入れることは、会社の将来に大きな安心をもたらすでしょう。

交渉・契約支援による安心感

事業承継には何かしらの交渉契約締結が伴います。親族間であっても株式や財産分割について合意形成が必要ですし、従業員承継やM&Aであればなおさら、条件の交渉や正式契約が不可欠です。
事業承継コンサルは、こうした場面で経営者をサポートし、適切な交渉と契約締結が行われるよう導いてくれます。例えば、第三者承継の際には譲渡価格や雇用継続条件などデリケートな交渉事がありますが、コンサルタントが仲介役となることで感情的な対立を避けつつプロ目線で妥当な条件を引き出すことが期待できます。
また、契約書のリーガルチェックについても専門知識を持つスタッフや提携弁護士が確認してくれるため、不利な契約条項を見逃すリスクを軽減できます。経営者にとっては、経験豊富な交渉役・裏方が付いていることで心強く、精神的な負担も大いに和らぐでしょう。重要な局面でプロの支援を得られる安心感こそ、事業承継コンサルを利用する大きなメリットの一つです。

【ケーススタディ】コンサルティング事例紹介

具体的な事例を2つご紹介します。(※プライバシー保護のため、内容は一部変更しています)

ケース1
後継者不在の製造業 → 第三者承継の事例

【課題】創業70年の金属加工メーカー。高い技術力を誇るが、経営者(70代)は高齢で、親族・社内に後継者候補が不在。廃業も視野に入れていた。

提案・実行
徹底した「見える化」
技術力や取引先ネットワークといった無形の価値を具体的に評価し、企業価値を再算定。

M&A戦略の策定
技術力を正当に評価し、従業員の雇用を維持してくれる相手先候補を複数リストアップ。

交渉の伴走
経営者の「会社と従業員への想い」を相手先に伝え、有利な条件だけでなく、企業文化のマッチングも重視した交渉を主導。

結果】大手メーカーのグループ企業となり、安定した経営基盤と新たな販路を獲得。
従業員の雇用は全員維持され、経営者は個人保証から解放されて安心してリタイアできた。

ケース2
親族内承継における兄弟間のトラブルを回避した事例

課題】 食品卸売業の社長(60代)が、長男(30代)への承継を希望。
しかし、別会社で働く次男も自社株を保有しており、将来の相続トラブルが懸念されていた。

提案・実行
中立的な対話の場の設定
ファシリテーターとなり、社長、長男、次男それぞれの想いや希望をヒアリング。

・事業承継計画の策定
税理士と連携し、事業承継税制や遺留分に配慮した最適な株式の移転計画を作成。
次男には納得のいく代償分割を提案。

後継者教育のサポート
長男に対し、経営者として必要な財務やマネジメントに関するメンタリングを実施。

結果】 兄弟間の円満な合意形成がなされ、スムーズな株式譲渡が実現。
後継者である長男は安心して経営に専念できる環境が整った。

事業承継コンサルの費用相場と料金体系

専門的なサポートを依頼するとなると、気になるのが費用面ではないでしょうか。ここでは、事業承継コンサルの一般的な費用相場と、その費用対効果について解説します。

事業承継コンサルの費用は、依頼する内容やコンサル会社によって様々です。大きく分けると、以下のような料金形態が取られることが一般的です。

スポット(個別業務)料金制

業務ごとに個別に料金が発生する方式です。例えば、「自社株評価の算定」や「事業承継計画書の作成」といった単位で依頼し、その都度費用を支払います。相場感として、自社株評価の依頼で数十万円、事業承継計画の策定で数十万~数百万円程度が目安とされています。

月額報酬制

コンサルタントとの契約を結び、月次で一定の報酬を支払う方式です。事業承継の準備から完了まで長期にわたる場合に採用されることが多く、毎月定額のコンサルティングフィーを払いながら継続支援を受けます。月額数十万円程度のケースが一般的です。

成功報酬制

M&Aによる承継など、成果が数値ではっきり出るものについては、成功時に報酬を支払う方式もあります。具体的には、譲渡が成立した際に譲渡金額の一定割合(数%前後が目安)を成功報酬として支払う形です。着手金や中間金を併せて設定しているコンサル会社もあります。

スポット(個別業務)料金制

業務ごとに個別料金が発生する方式。

・自社株評価の算定:数十万円の目安

・事業承継計画の策定:数十万〜数百万円程度

※実際の金額は規模・難易度で変動します。

月額報酬制

準備〜完了までの長期支援を定額で受ける方式。

・相場感:月額数十万円程度が一般的

・進行管理・各専門家連携を含むケースが多い

※契約範囲と体制により上下します。

成功報酬制(M&Aなど)

成果が数値で明確な場合、成立時に譲渡対価の一定割合を支払う方式。

・目安:譲渡金額の数%前後

・着手金・中間金を併用する契約形態もあり

レーマン方式(概念図:金額帯が上がるほど料率が下がる)

・〜低額帯 料率:高め(例)
・中間帯 料率:中(例)
・高額帯〜 料率:低め(例)

※具体の料率・区分は各社で異なるため、必ず見積・契約書で確認してください。

以上のように、費用体系はケースバイケースです。中小企業の場合、トータルで数百万円規模の費用がかかることもありますが、規模や難易度によってはもう少し低額に抑えられる場合もあります。まずは信頼できるコンサル会社に相談し、見積りを出してもらった上で、費用に見合う支援内容かどうかを検討されると良いでしょう。

コンサル費用に見合う効果は?

「コンサルに依頼すると費用が高いのでは?」と心配になるかもしれません。しかし、事業承継コンサルを活用することで得られる効果を考えると、その費用対効果は決して小さくありません。

まず第一に、誤った進め方をして後から多額の税金や訴訟費用を支払うリスクを大幅に減らせます。適切な節税対策により本来納めるはずだった税額を抑えられれば、その分だけ資金を事業のために活用できますし、万一トラブルが発生して会社が分裂したり訴訟沙汰になったりすれば、費用どころではない損失を被る可能性すらあります。プロのサポートによってそれらを未然に防げる効果は計り知れません。

また、M&Aによる売却を成功させた場合、コンサルタントの交渉力次第では当初予想より高い譲渡金額を引き出せるケースもあり、その増加分が報酬を上回る価値をもたらすこともあります。さらに、国の事業承継・引継ぎ補助金などを活用すれば、後継者教育や専門家利用にかかった費用の一部について補助金が受け取れる可能性もあります。こうした支援策も含め、コンサル費用を抑えつつ最大限の効果を得る道もあります。

何より、専門家の力を借りて会社の存続と成長を次世代につなげられること自体が大きな価値です。長年築いてきた事業を将来に残すための「投資」と捉えれば、事業承継コンサルへの支出は決して高い買い物ではないでしょう。

失敗しない事業承継コンサルの選び方

事業承継コンサルは各社によって得意分野やサービス体制が異なります。後悔しない選択をするために、コンサルタント(会社)を選ぶ際のポイントを押さえておきましょう。

事業承継コンサル選びのチェックリスト

専門知識・実績

ワンストップ体制

コミュニケーションと相性

専門知識・実績の豊富さ

まず重視すべきは、そのコンサルタントや会社が事業承継に関する専門知識と実績を豊富に持っているかどうかです。事業承継は経営・法律・税務・財務・人事など複合的な知見が求められる分野です。
弁護士、公認会計士、税理士、中小企業診断士といった専門資格を持つスタッフが在籍しているか、また実際にこれまで多数の事業承継案件を成功に導いた実績があるかを確認しましょう。資格を持っているかどうか以上に、「中小企業の事業承継」に特化した深い知識と豊富な経験を有しているかが重要です。
公式サイトの事例紹介や相談実績の数字なども参考になります。経験豊富なコンサルであれば、想定外の事態にも柔軟に対処できるため安心です。逆に実績が乏しい場合、重要な局面で判断を誤るリスクもゼロではないため、信頼に足る相手か十分に見極めることが大切です。

ワンストップ対応の体制

事業承継には多岐にわたる手続きや調整が伴います。ワンストップ対応ができるコンサル会社であれば、経営者の負担を大きく軽減してくれるでしょう。例えば、社内に税務・法務それぞれの専門家チームを抱えていたり、外部の弁護士や税理士、M&A仲介会社などと強固な提携関係を持っていたりする場合、一つの窓口で事業承継に関するあらゆる相談が完結します。ワンストップサービスでない場合、経営者自ら別々の専門家に連絡を取って調整する手間が生じることも考えられます。初回相談時には、「税務対応や法務対応も含めてお願いできますか?」、「顧問先の弁護士や税理士と連携いただけますか?」といった点を確認し、必要なサポートを一括して任せられる体制が整っているかをチェックしましょう。ワンストップで任せられれば、情報共有もスムーズで支援の抜け漏れが少なく、より円滑な承継準備が期待できます。

コミュニケーションとコンサルタントとの相性

最後に見落とせないのが、コンサルタントとの相性やコミュニケーションの取りやすさです。事業承継は非常にプライベートな要素も含むデリケートなテーマです。経営者の価値観や家族観、会社への想いなどをしっかり汲み取ってもらい、寄り添った支援を受けるには、担当者との信頼関係が不可欠です。初めて会った際の印象や、質問への丁寧さ、こちらの話を親身に聞いてくれるかどうかといった点をチェックしましょう。専門知識が豊富でも高圧的であったりこちらの意向を軽視するような態度であれば、長い付き合いの中で不満が募るかもしれません。多くのコンサル会社は初回無料相談を実施していますので、そこでフィーリングを確かめるのも良いでしょう。
相談しやすく、なんでも話せる相手であること—これは数字には表れにくいですが、成功に向けて非常に重要なポイントです。

  • 傾聴力: こちらの話を親身になって聞いてくれるか。
  • 説明の分かりやすさ: 専門用語を多用せず、複雑な内容を平易な言葉で丁寧に説明してくれるか。
  • 価値観の共有: 会社の歴史や経営理念、従業員への想いを理解し、尊重してくれるか。
  • 迅速性と誠実さ: 質問や相談に対するレスポンスが早く、誠実に対応してくれるか。
主な事業承継の相談先と特徴の比較
相談先 主な強み・特徴 主なサービス 費用体系 こんな経営者におすすめ
M&A仲介会社 ・豊富な譲受候補企業ネットワーク
・交渉力
・M&Aプロセスの専門知識
・M&Aのマッチング
・企業価値評価・交渉支援
・デューデリジェンス対応
成功報酬型が中心 後継者不在で、第三者への会社売却を具体的に検討している。
税理士法人・会計事務所 ・相続税・贈与税対策
・自社株評価
・事業承継税制の活用に強み
・自社株評価・税務シミュレーション
・事業承継計画策定・税務申告
業務別報酬型、月額報酬型 親族内・社内承継を主軸に考え、税負担の軽減が最優先課題。
金融機関(銀行など) ・融資を通じた長年の取引関係
・財務状況の深い理解
・資金調達支援
・承継関連の資金調達
・専門家・M&A仲介の紹介
・マッチング支援
融資に付随するサービスが中心 まず相談先が分からず、資金調達も同時に検討したい。
事業承継・引継ぎ支援センター ・公的機関としての信頼性と中立性
・全国ネットワーク
・承継に関する無料相談
・承継診断・初期のマッチング支援
原則無料(専門家への実務依頼は有料) まずは中立的な初期アドバイスが欲しい。

相談先については、事業承継の相談先比較記事をご覧ください。

事業承継コンサル選びの失敗事例

高い費用を払ったにもかかわらず、望む結果が得られないばかりか、かえって状況が悪化するケースも存在します。ここでは、実際に起こりうる失敗事例とその教訓をご紹介します。

M&Aありきの提案で、他の選択肢を潰された

「後継者不在ならM&Aしかありません」。そう断言され、親族や従業員への承継の可能性を十分に検討することなく、高額なM&A契約を結んでしまったA社。しかし、後になって自社の理念に共感してくれる従業員が事業を継ぎたがっていたことを知り、後悔することになりました。

あらゆる選択肢のメリット・デメリットを公平に提示してくれるかを見極めることが重要です。
初期の段階で特定の結論に誘導しようとするコンサルタントには注意が必要です。

自社の業界に疎く、企業価値を不当に低く見積もられた

製造業のB社は、コンサルタントに自社の強みである「特殊な加工技術」や「長年の取引先との信頼関係」といった無形の価値を理解してもらえませんでした。結果として、貸借対照表上の数字だけで企業価値を低く見積もられ、安売りする形でM&Aを進められそうになりました。

自社の業界やビジネスモデルに対する深い知見を持っているかは、極めて重要な選定基準です。コンサルタントの過去の実績や得意分野を必ず確認しましょう。

契約内容が曖昧で、後から追加費用を次々と請求された

「成功報酬のみ」という言葉を信じて契約したC社。しかし、契約書をよく見ると「月次のレポート作成費用」「出張交通費」などが別途請求される仕組みになっていました。結局、最終的な支払額は想定の1.5倍に膨れ上がってしまいました。

➡ 契約前に、どこまでが報酬に含まれ、何が追加費用となるのか、書面で詳細に確認しましょう。
「不明瞭な点はすべて質問する」という姿勢が身を守ります。

「あとは当事者同士で」担当者が途中で投げ出してしまった

M&Aの基本合意までは熱心だった担当者が、最も大変な条件交渉や従業員への説明の段階になると、「あとは弁護士の先生とお願いします」と急に距離を置き始めた。専門家との連携がうまくいかず、社内は混乱。承継後の経営は困難を極めました。

承継プロセスの最後まで伴走してくれるか、特に承継後の統合プロセス(PMI)まで見据えたサポート体制があるかを確認することが不可欠です。

とにかく不安を煽り、高額な契約を急がせる

「今決断しないと手遅れになります」「あなたの会社を欲しがっている企業は他にありません」など、経営者の不安を過度に煽り、冷静な判断をさせないまま契約を迫るケースです。

➡ 信頼できるパートナーは、いたずらに不安を煽るのではなく、客観的なデータと事実に基づいて、経営者の意思決定を冷静にサポートしてくれます。

事業承継で活用できる税制・補助金など公的支援策

事業承継を後押しするために、国や自治体も様々な支援制度を用意しています。ここでは、経営者にぜひ知っておいていただきたい税制優遇補助金などの公的支援策をご紹介します。

事業承継税制(納税猶予制度)のポイント

事業承継税制とは、中小企業の後継者が先代経営者から株式を承継する際に適用できる納税猶予・免除制度です。通常、親族内承継で株式を相続または生前贈与すると、多額の相続税や贈与税が発生します。
この制度を利用すると、一定の条件のもとでそれら税金の納付が猶予され、最終的に要件を満たせば納税が免除される場合もあります。
主な条件としては、都道府県知事の認定を受けた事業承継計画を策定していること、承継後も5年間は事業を継続し雇用を維持すること、承継した株式を保有し続けることなどが挙げられます。

この制度を活用すれば、後継者が負担する相続税・贈与税の支払いを事実上ゼロにできる可能性があり、資金繰り面で大きな助けとなります。ただし、適用を受けるためには事前準備や各種手続きが必要ですので、興味のある方は税理士や事業承継コンサルに相談しながら進めると良いでしょう。

  • 「特例承継計画」の提出期限は 2026年3月31日
  • 贈与・相続の実行期限は 2027年12月31日
  • 雇用維持要件(8割)が見直され、要件未達でも一定条件で納税猶予が継続可能
[出所]中小企業庁 – 法人版事業承継税制(特例措置)

事業承継・引継ぎ補助金とは?

事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継時の様々な取り組みやM&Aによる経営資源引継ぎに対して、国が費用の一部を補助してくれる制度です。中小企業庁が所管しており、毎年公募期間が設定されています。補助金には、「事業承継促進枠」、「専門家活用枠」、「廃業・再チャレンジ枠」、「PMI推進枠」などいくつかの枠があります。

事業承継・M&A補助金(十二次公募/2025)枠別マトリクス
枠名 目的 主な対象経費 補助率 上限額 主な条件・備考
事業承継促進枠 親族内・従業員承継に向けた生産性向上投資 設備投資費用、店舗改築 等 1/2(小規模2/3) 800〜1,000万円 承継予定があること 等
専門家活用枠(買手) M&Aによる経営資源引継ぎの専門家活用 FA/仲介費用、DD、セカンド・オピニオン 等 1/3〜2/3(条件で変動) 600〜800万円(最大2,000万円類型あり) 登録M&A支援機関に限る
専門家活用枠(売手) M&Aによる経営資源引継ぎの専門家活用 FA/仲介費用、DD、セカンド・オピニオン 等 1/2・2/3(条件で変動) 600〜800万円 登録M&A支援機関に限る
PMI推進枠(専門家活用) M&A後のPMI専門家費用 外注費、委託費 1/2 150万円
PMI推進枠(統合投資) M&A後の統合に伴う設備投資 設備費 1/2(小規模2/3) 800〜1,000万円
廃業・再チャレンジ枠 廃業費用の補助(再挑戦支援) 廃業支援費、在庫廃棄、解体費 等 2/3または1/2 150万円 法人は株主、個人は本人

この補助金を活用できれば、事業承継コンサルや専門家への依頼費用、新事業への投資資金の一部を国から援助してもらえるため、経営者の金銭的負担が軽減されます。ただし、公募期間内に申請書を作成して応募し、採択される必要がありますので、利用したい場合は早めに情報収集し、事業承継コンサルとも相談しながら準備を進めると良いでしょう。

その他の支援制度や相談先

上記のほかにも、事業承継に関して公的機関が提供している支援策や相談窓口があります。主なものをいくつかご紹介します。

事業承継・引継ぎ支援センター

事業承継・引継ぎ支援センターは、中小企業庁の委託を受け、全国の都道府県に設置されている公的相談窓口です。専門のコーディネーターが在籍し、親族内承継に関する相談から後継者不在の場合のマッチング支援(後継者人材バンク)まで、幅広く無料で相談に乗ってくれます。
必要に応じてM&A仲介業者や専門家の紹介も行っており、公的機関ならではの中立的な立場でサポートを受けられます。

商工会議所・商工会、自治体の相談窓口

各地の商工会議所や商工会、中小企業支援センター、さらには都道府県や市区町村の経営相談窓口でも、事業承継に関するアドバイスを提供しています。事業承継セミナーの開催、専門家派遣、関連する補助制度の案内など、地域に根ざした支援が特徴です。日頃から経営相談に乗ってもらっている場合は、その延長で事業承継の相談もできるでしょう。また、一部自治体では独自の事業承継支援補助金を用意している場合もありますので、お住まいの地域の情報をチェックしてみてください。

これら公的機関の支援策は基本的に無料または低コストで利用できるものが多く、有効に活用することで事業承継のハードルを下げることができます。もちろん、具体的な手続きの実行や専門的アドバイスは民間の事業承継コンサルが担う部分も大きいですが、公的支援と併用することで一層手厚い体制を築けるでしょう。

事業承継コンサルティングに関するよくあるQ&A

Q. 相談したいですが、何から話せばいいかも分かりません。
A. まったく問題ありません。ほとんどの経営者様が、整理されていない漠然とした不安を抱えた状態からご相談を始められます。初回のご相談では、私たちが丁寧にご状況をヒアリングし、課題を整理するところから始めますので、ご安心ください。

Q. 無料で相談できるところはありますか?
A. はい、事業承継・引継ぎ支援センターや地域の商工会議所などの公的機関では、無料で初期相談を受け付けています。また、多くの事業承継コンサルティング会社でも、初回無料相談を実施している場合がありますので、まずは気軽に問い合わせてみることをおすすめします。

Q. 相談する前に準備しておくべきことはありますか?
A. 前に会社の財務状況(決算書など)、事業内容、抱えている課題(後継者不在、業績不振など)、そして「どうしたいか」という経営者様の想いを整理しておくと、よりスムーズな相談が可能です。具体的な資料がなくても、まずは口頭で相談できるケースがほとんどです。

Q. 複数の相談先に話を聞いても大丈夫ですか?
A. 全く問題ありません。むしろ、複数の相談先に話を聞くことで、それぞれの専門性や費用、担当者との相性を比較検討でき、より良いパートナーを見つけることに繋がります。納得いくまで情報を集めることをおすすめします。

Q. 会社の価値(株価)はどのように算定されますか?
A. 企業の価値評価には、純資産を基準にする「コストアプローチ」、類似企業との比較で算出する「マーケットアプローチ」、将来の収益力から算出する「インカムアプローチ」など複数の方法があります。どの方法が適しているかは企業の状況によるため、専門家が複数の視点から総合的に評価します。

Q. 従業員への告知はどのタイミングで行うべきですか?
A. 従業員への説明は非常にデリケートな問題です。一般的には、M&Aの場合は最終契約後、親族内承継の場合は後継者が正式に決定し、関係者の合意が形成された後が望ましいとされます。早すぎる告知は、従業員の不安を招き、事業に支障をきたす可能性があるため、専門家と相談の上で慎重にタイミングを計るべきです。

事業承継コンサルまとめ

企業活動は、創業者/経営者様の信念が出発点です。他社と差別化された優位性もまた、創業理念→企業文化→価値観など、現場に宿る「見えない資産」がその原型です。事業承継は、歴史的成果にもとづく変革の機会であり、GDGの事業承継コンサルティングは、単に株式や資産の移転をサポートすることが目的ではありません。事業承継に関する不安や疑問を少しでもお持ちなら、まずは初回無料相談をご利用ください。

まずは無料相談してみる

▼「GDGマガジン」とは?
GDGマガジンは、事業承継、営業、マーケティング、組織づくりなど、中堅・中小企業経営者の皆様に役立つ情報をわかりやすく発信するビジネスメディアです。経営や事業承継の実践的な経験を活かしながら、経営者様が抱える様々な課題に寄り添い、価値あるコンテンツをお届けしています。

※本サイトは、法律・税務・会計またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情をもとに専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断にてご利用をお願いします。また、掲載している情報は記事更新時点のものです。

マガジンTOP