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事業承継 # 事業承継計画# 企業価値向上

事業承継の相談先はどこがいい?失敗しないための比較とチェックリスト

更新日 : 2025.08.27

【この記事でわかること】

・事業承継の相談先にはどんな種類があるのか(税理士・弁護士・金融機関・M&A仲介・公的機関など11種を比較)

・各相談先のメリット・デメリットと費用感(強み・注意点・おすすめ状況を一覧で把握)

・状況別に最適な「最初の一歩」(親族承継/第三者譲渡/準備不足/経営不安の4シナリオ)

・失敗を防ぐためのチェックリスト(専門性・費用の透明性・連携体制・相性・危険信号)

・初回相談を有意義にする準備方法(目的整理、必要資料[NDAの注意点含む]、現状把握、質問リスト)

【この記事を読むメリット】

・数ある相談先の中から、自社に合った「最初の一歩」を迷わず選べるようになります。

事業承継は、多くの経営者にとって人生でもっとも大きな決断のひとつです。
会社の歴史や従業員の未来、ご家族の生活がかかっているからこそ、最初の一歩──「誰に相談するか」で迷う方は少なくありません。

本記事は、ただ相談先を並べる一覧ではありません。先の見えにくい事業承継の道を安心して進めるための地図であり、何よりも「大きな失敗を避ける」ための実践ガイドです。

事業承継の相談先を比較(11種類の特徴・費用・おすすめ状況)

「相談相手にはどんな選択肢があるのか?」──ここを押さえておくことが第一歩です。
以下の表では、主な相談先の強み・弱み・費用の目安、そしてどんな状況に適しているかをまとめています。経営者が自分に合う相談先を考えるためのチェックリストとしてご活用ください。

項目 事業承継・引継ぎ支援センター 商工会議所・商工会 顧問税理士・公認会計士 弁護士 M&A仲介会社 経営コンサルタント 金融機関 司法書士 行政書士 よろず支援拠点 親族・友人
主な強み 公的機関としての信頼性・中立性、全国ネットワーク 地域密着型の支援、セミナー開催、専門家派遣 会社の財務状況を深く理解、税務の専門知識 法務・契約問題、紛争解決の専門家 豊富な譲受候補企業ネットワーク、交渉力、M&A実務の専門知識 経営全体の視点、承継前後の経営戦略支援 財務状況の深い理解、資金調達支援 不動産・商業登記の専門家 許認可手続きの専門家 国が設置した無料の経営相談所 関係性が近く、精神的な支え
対応領域 無料相談、承継診断、初期のマッチング支援(後継者人材バンク) 事業承継の基本情報提供、関連補助金案内、専門家の紹介 自社株評価、相続税・贈与税対策、事業承継税制活用支援 契約書作成・レビュー、相続トラブル対応、法的手続き全般 M&Aマッチング、企業価値評価、交渉支援、デューデリジェンス対応 事業承継計画策定、後継者育成、承継前の企業価値向上支援(磨き上げ) 承継関連の融資、専門家・M&A仲介の紹介、マッチング支援 役員変更登記、株式譲渡に伴う登記手続き 事業に必要な許認可の承継手続き 経営課題全般に関する初期相談 個人的な相談
費用体系の目安 原則無料(専門家への実務依頼は有料) 原則無料 業務別報酬、月額報酬 相談料、タイムチャージ、業務別報酬 成功報酬(レーマン方式)、着手金、中間金 月額報酬、プロジェクト報酬 融資関連サービスが中心 業務別報酬 業務別報酬 無料 なし
メリット 中立的な初期アドバイスを得られる。無料で相談できる。 気軽に相談できる。地域の支援情報を得やすい。 会社の内部事情に精通しているため話が早い。税負担軽減に強い。 法的トラブルを未然に防ぎ、発生時にも対応できる。 第三者への売却を迅速かつ有利に進められる可能性が高い。 事業承継を経営課題として捉え、包括的な支援が期待できる。 資金調達と承継の相談を同時に行える。 承継に伴う煩雑な登記手続きを正確に代行してくれる。 許認可の引き継ぎをスムーズに行える。 幅広い経営の悩みを無料で相談できる。 何でも気軽に話せる。
デメリット・注意点 実行支援は行わないため最終的には有料の専門家が必要。地域により支援レベルに差がある可能性。 専門家ではないため具体的な実行支援は不可。紹介が主業務。 事業承継の専門知識や実績が必ずしも豊富とは限らない点に注意。 ビジネス戦略の専門家ではない。事業承継に精通した弁護士の選定が必要。 手数料が高額になりがち。利益相反や悪質な買手のリスクに注意。 専門分野や質が様々。費用が高額になる場合がある。 自社の金融商品を優先される可能性。M&Aの選択肢が取引先に限定されることも。 対応範囲が登記関連に限定。 事業承継に精通した専門家が限られる場合。対応範囲も限定的。 事業承継の専門機関ではないため、深い相談には不向き。 専門知識がなく、客観性や正確性に欠けるアドバイスになる危険性。
こんな経営者におすすめ まず何から始めるべきか、中立的な意見が欲しい場合。 経営全般の相談に乗ってもらっており、まずは気軽に話を聞きたい場合。 親族内・社内承継が前提で、税金対策を最優先したい場合。 相続人が複数いるなど、法的な紛争リスクが懸念される場合。 後継者不在で、第三者への会社売却を具体的に検討している場合。 承継を機に経営全体を見直し、企業価値を向上させたい場合。 相談先が分からず、資金調達も視野に入れている場合。 承継に伴い、不動産や会社の登記変更が必要な場合。 建設業や飲食業など、事業運営に許認可が不可欠な場合。 経営課題が山積しており、何から手をつけるべきか整理したい場合。 専門家に相談する前の、個人的な気持ちの整理。

状況別・最適な相談の始め方(4つのシナリオ)

事業承継は会社の状況によって、最初に向かうべき相談先が変わります。ここでは4つの典型的なシナリオを例に、それぞれに適したスタート地点をご紹介します。

シナリオ1. 親族や従業員に継がせたい場合

親族内承継や従業員承継には、相続税や贈与税、株式の承継に伴う法的枠組み、親族間の合意形成が課題です。
まずは事業承継に詳しい税理士や弁護士に相談し、税負担の試算や相続トラブルの可能性を早めに洗い出すのが安心です。

シナリオ2. 後継者が見つからず、会社を譲渡したい場合

課題は、企業価値の適正な評価と信頼できる譲受候補の探索です。
最初に「事業承継・引継ぎ支援センター」といった公的機関で中立的な情報を得て、そのうえでM&A仲介会社や事業承継コンサルタントに進むのが安全です。事業承継コンサルタントは、複数の専門家を束ねて全体設計を担う“司令塔”として機能します。

シナリオ3. 何から始めればよいかわからない場合

「事業承継は必要だと思うが、どこから手を付けてよいか分からない」という経営者も少なくありません。
この場合は、事業承継・引継ぎ支援センターや商工会議所など、無料で相談できる公的機関を訪ねてみるのがおすすめです。リスクなく第一歩を踏み出せ、自社の課題を整理するきっかけになります。

シナリオ4. 会社の経営状態に不安がある場合

承継以前に、事業再生や経営基盤の強化、磨き上げが必要になるケースです。
中小企業活性化協議会や、再生実績のある経営コンサルタントに相談するのが良いでしょう。承継前に会社の足腰を固めておくことが成功の条件です。

事業承継の全体像は 事業承継ガイド に掲載しています。

失敗を避けるための5つのチェックポイント

ここからは、相談先を選ぶときに必ず押さえておきたいポイントです。チェックリストのように活用しながら、「この相手は信頼できるか?」を一つずつ確認してみてください。

チェック1. 肩書きよりも、経験と実績を確かめる

顧問税理士や長年付き合いのある専門家でも、事業承継の経験が十分とは限りません。面談の場では、同じ規模・業界での成功例や失敗例を尋ねてみましょう。さらに、弁護士や司法書士など他の専門家とどのように連携しているかを確認すると安心です。

チェック2. 費用の透明性を確かめる

特にM&Aでは、報酬体系が不透明なことが多く、後々高額な費用が発生するケースもあります。相談料・着手金・中間金・成功報酬といった項目を必ず明示してもらい、成功報酬の計算方法や交渉不成立時の費用も確認しておきましょう。

チェック3. 連携体制が整っているか

事業承継は税務・法務・戦略が絡み合う複雑なプロセスです。ワンストップで対応できる体制があるか、強固な外部ネットワークを持っているかを尋ねることが重要です。

チェック4. 担当者との相性を大事にする

承継には数年かかることも珍しくありません。その間、担当者と密にやり取りするため、人間的な相性は非常に重要です。初回相談では、相手がきちんと話を聞いてくれるか、自分の価値観を理解しようとしているかを見極めてください。

チェック5. 危険信号を見逃さない

悪質な相談先は「今だけの好条件です」と急かしたり、説明が曖昧だったりします。セカンドオピニオンを避けさせる態度や、資金力に乏しい買い手を持ち込むなどのサインが見えたら、契約を急がず、別の専門家にも必ず相談しましょう。

初回相談を有意義にする準備リスト

相談に行く前に少し準備をしておくだけで、得られるアドバイスの精度は大きく変わります。以下のステップを参考に、事前整理を進めてみてください。

ステップ1:目的を明確化する

「円満に引退したい」「新体制で会社を成長させたい」「家族の生活を守りたい」「従業員の雇用を維持したい」──何を最優先するかによって、相談内容や判断基準は大きく変わります。
こうした目的を整理したうえで事業承継計画を作成すると、相談の場で方向性がぶれません

ステップ2:基本的な書類をそろえる(ただし開示は慎重に)

決算書(3〜5期分)、株主名簿、定款、主要契約書、不動産関連資料、借入金契約書などを整理しておきましょう。
ただし、これらを最初から全て提示する必要はありません。公的機関や初回相談では、売上規模や従業員数など概要で十分です。詳細資料は、信頼できる相手と秘密保持契約(NDA)を結んでから渡すのが基本です。

ステップ3:自社の現状を見直す

自社の強みや弱み、今後のチャンスとリスクを簡単にまとめてみましょう。
また、キーパーソンとなる従業員を挙げ、その人が抜けた場合の影響も想像してみると、承継の課題が見えやすくなります。

ステップ4:聞きたいことをメモしておく

実際に支援機関などに相談すると、時間はあっという間に過ぎます。前の章でご紹介した「5つのチェックポイント」を参考に、相談先に必ず聞きたい質問を事前にリスト化しておきましょう。準備して臨むことで、相談の場が「ただ話を聞く時間」から「具体的な判断材料を得る時間」に変わります。

まとめ|最初の一歩が承継の成否を決める

事業承継は、最初の相談先選びがその後の成否を大きく左右します。正しいパートナーを選べばリスクを避けつつ価値を最大化できますが、誤ればトラブルや価値毀損につながりかねません。

この記事では、相談先の全体像、選び方の基準、準備の進め方をご紹介しました。ここまで読んでいただければ、ご自身がどのような状況で、どの入り口から動くべきかが少しクリアになったのではないでしょうか。

まずは無料相談してみる

ただ実際には、税務・法務・M&A・事業再生など複数の領域が絡み合い、複数の専門家を連携させて進める必要があります。その全体を見渡し、適切に設計・調整していく役割を担えるのが、事業承継に強い経営コンサルタントです。

詳しくは、こちらの記事で解説しています。
次の一歩を検討する際に、ぜひこちらも参考にしてみてください。
事業承継コンサルとは?相談先・専門会社の失敗しない選び方と費用

監修者

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宇納 陽一郎

グランド・デザイニング・グループ代表。早稲田大学卒業後、野村證券にて営業・投資銀行業務に従事した後、日清食品にて経営企画・M&Aに従事。その後、PE投資会社にて複数社での事業承継および新体制構築を経験。経営・営業・管理の実体験を活かした営業戦略や経営経営管理体制の構築支援を提供。㈱ウォーターフロント代表取締役、㈱ナルネットコミュニケーションズ取締役等を歴任。

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