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事業承継で持株会社(ホールディングス)は有効?活用のメリット・デメリット・スキームを徹底解説

更新日 : 2025.08.29

GDGマガジン|中堅/中小企業経営者のためのビジネスメディア

事業承継における株式にまつわる話題は、重要性が高く、関心事にもなりやすいテーマです。
中堅・中小企業においても、持株会社を活用した事業承継を検討するケースが多くありますが、実際のところ、どのようなスキームなのでしょうか?
本記事では、持株会社の概要から、スキーム、メリットとデメリットなどをみていきましょう。

持株会社の概要

持株会社とは

持株会社とは、他の会社を支配する目的で、その会社の株式を保有する会社のことを指します。

持株会社には、『事業持株会社』と『純粋持株会社』があります。
『事業持株会社』は、事業を行うかたわらで他の会社の株式を保有する会社、
『純粋持株会社』は、事業を行わずに、純粋に他の会社の株式を保有する会社です。

純粋持株会社の場合は、配当が主だった収入になりますが、経営指導料などを受け取る方法もあります。
純粋持株会社は、独占禁止法が制定されてから禁止されていましたが、1997年に同法改正により解禁されました。

持株会社への移行(ホールディングス化)

上場会社でも、経営の監督機能強化や、迅速な意思決定などのコーポレートガバナンスの強化や、M&Aなどを通じたグループ経営の加速などのために、持株会社への移行は多くみられます。

持株会社への移行は、『ホールディングス化』とも呼ばれ、代表的な企業としては、
日清食品ホールディングス(日清食品㈱、明星食品㈱など)
J. フロント リテイリング(㈱大丸松坂屋百貨店、㈱パルコなど)
ニトリホールディングス(㈱ニトリ、㈱島忠など)などが挙げられます。

事業承継における持株会社スキームの活用

持株会社は従前から中堅中小企業で活用されている形式です。
事業承継の全体像については、事業承継ガイドをご参照ください。

持株会社の活用パターン

事業承継における持株会社の活用には大きく2パターンあります。

① 後継者による持株会社の設立と株式取得

後継者が持株会社を新設し、持株会社にて借入金等により資金調達を行います。

その後、現経営者が保有する会社株式(以下、対象会社)を持株会社にて取得します。

対象会社からの配当を通じて、借入金等を返済していきます。

事業承継における持株会社

② 株式移転等による持株会社の設立

持株会社は、株式移転、株式交換、会社分割などによっても設立が可能です。
株式移転では、現経営者が保有する対象会社株式は持株会社に移転し、株主に対しては持株会社の新株を割り当てます。
税制適格要件を満たせば、適格株式移転となります。

なお、持株会社の設立時点では、後継者への株式の承継は完了していませんので、その後に贈与・相続などで承継を行うことになります。

具体的な活用シーンとしての従業員承継(MBO)

親族内での後継者の不在課題がある中で、マネジメント・バイアウト(MBO)、つまり従業員承継においては、持株会社の活用は一考の価値があると考えられます。

従業員承継は、親族内承継とは違い、相続や贈与といった選択肢が少なく、基本的には株式の譲渡(売買)によって行われることになります。
譲渡では、純資産価額や類似業種比準価額といった、財産評価基本通達での評価方式となるため、従業員承継の実行においては『多額の資金』を必要とする可能性が高いといえます。

株式の所有と経営を別ける、つまり、経営のみを役職員へ承継し、株式はファミリーオフィスのように創業家が持ち続けるという方法も考えらえますが、非上場の場合に、経営者のコミットメントをいかに引き出すかや、必要なガバナンスを利かせられるか(単なる計数管理ではなく)という課題が残ります。

この点、後継者が経営面での承継とともに株式を取得することで、所有と経営の一体構造を築き上げられるという点においては、持株会社による事業承継は現実的な選択肢となり得ます。
以降は、『持株会社を活用した株式取得と事業承継』について、メリットとデメリットを見ていきます。
[関連]従業員承継の概要と実行ステップ

シミュレーションで理解する持株会社活用のモデルケース

ケース1:後継者候補が複数いる製造業

  • 前提:創業30年/年商20億円/子3人(長男・次男=社内、三男=社外)。
  • スキーム:長男・次男が持株会社(純粋持株)へ出資 → 持株会社が現経営者から事業会社株式を売買で取得 → 経営権を一本化。
  • 公平な分配:関与しない三男には現金(売却代金由来)で対応し、株式分散を回避。
  • ガバナンス:兄弟間は取締役会の役割分担と株主間契約で紛争予防。
  • 資金計画:返済原資=子会社からの配当(受取配当の益金不算入制度で実効負担を抑えやすい)→借入の返済可能性を配当性向×利益水準でチェック。

ケース2:M&Aによる事業拡大も視野に入れる企業

  • 前提:創業10年/従業員30名/10〜15年後の最終イグジットも視野。
  • スキーム:持株会社をプラットフォーム化→本体(中核)と新規買収(周辺)を子会社として分離管理。
  • リスク分離(赤字子会社の損失遮断)、意思決定の迅速化、PMI手順の標準化。
  • 配当還流でグループ内キャッシュ配分と借入返済を設計(事前に分配可能額と銀行コベナンツを確認)。
  • 受取配当の益金不算入(持分比率に応じ適用区分あり)を踏まえ、税引後キャッシュを最大化。

ケース3:持株会社化の判断を誤った事例

  • 事例:小売業が、持株会社で株式買取資金を借入→直後に業績悪化で配当不能。持株会社は収益源乏しく返済滞留。
  • 借入の返済原資は継続配当+分配可能額の範囲内で要設計。
  • 事業の将来性や収益力を冷静に分析せず、節税や株式集約といった目先のメリットだけで判断すると、かえって財務状況を悪化させるおそれがあります。

持株会社のメリット(株式取得)

現在の経営者利潤の確保

現在の経営者が、経営者利潤としての現金を確保できます。
株式の譲渡益は課税対象となりますが、役員報酬や配当による現金確保と比べると、分離課税となるため税率が有利になる可能性があります。

現在の経営者による現金の確保(相続の観点)

現在の経営者は、将来の相続を見据えた納税資金として、現金の確保が可能です。
相続財産が株式から現金となるため、財産がシンプルな状態になります。
株式のまま相続になると、遺産分割が偏り、遺留分の侵害などのトラブルや、場合によっては財産返還請求により自社株の分散に繋がるリスクがあります。

遺留分(相続の観点)

上記と類似しますが、高い評価額の株式を「相続や贈与」で承継した場合、後継者以外の遺留分を侵害することがあります。
持株会社の場合、後継者が「買い取り」を行うため、その他の相続人との関係上、有効な施策となる可能性はあります。

株式分散リスク回避(経営リスクの観点)

上記に加えて、持株会社が、対象会社の発行済株式のすべてを取得することで、基本的には議決権を集約できます。
また、議決権制限株式などを併用すれば、現在の経営者によるガバナンスを利かせたまま、株式については先立って承継を行うなどの工夫も可能です。

資金調達が可能

持株会社では、調達した借入金の返済原資として配当を活用します。
配当金の益金不算入制度」の要件を充足すれば、持株会社が支払を受ける配当金は、そのまま返済原資になります。
そのため、配当金および株式取得価額の水準次第では、借入金を弁済する蓋然性が見込めるため、資金調達が可能になります。

仮に個人で対象会社の株式を取得する場合、配当と役員報酬が借入金の返済原資になりますが、個人が受け取る非上場株式の配当は総合課税の対象です。また、役員報酬も課税対象です。
つまり、返済原資となるのは、「税引後の」配当と役員報酬です。

株価への影響(37%控除)

純資産価額方式においては、評価通達に基づいて算出した『時価純資産差額』と評価の基となる『簿価純資産価額』との差額、つまり株式の「異動後」に生じた株式の含み益を37%控除できる可能性があります。

これについては、親族内承継においても、株価の上昇局面において有利に働く可能性があります。
一方で、後述の通り、持株会社が『株式等保有特定会社』に該当する可能性があるため、いかなる状況でもメリットになるわけでは無いことに注意が必要です。

持株会社のデメリット

取引する株価と税務リスクの検討

売買のため、相続税法上の時価(相続税評価額)ではなく、所得税法上・法人税法上の時価になります。
取引相場のない株式の評価方式に依拠することになりますが、基本的には株式取得価額とその買取負担額が上がる可能性があります(そうでない場合、みなし贈与や受贈益などの認定リスクに留意が必要です)。
従業員承継でも、この点には留意が必要といえます。
特に親族内承継の場合は、その他の選択肢との比較検討が必要です。

借入金の返済と利息の支払い原資が必要

上述の通り、持株会社の借入金は、配当をもとに返済することがメインです。
配当は会社法上、『分配可能額』に制限されるため、会社で利益が出せなければ配当を支払うことは難しくなり、期日設定されている借入金の返済や利息支払いは困難です。
借入金返済額や利息などの水準と、利益見通しを踏まえた『事業計画』の作成と検討が必要です。

持株会社の設立や運営に関する事務負担と費用

持株会社の設立や運営に関する事務負担と費用が発生します。

株式の譲渡所得課税が生じる

先述の通り、譲渡所得課税が発生します。

株式とは異なる相続税

現経営者が受け取った現金(相続財産)に、相続時の優遇規程はありません。
すべて使い切らない場合、相続財産としては、現金が増えることになります。

費用・期間・相談先は?持株会社設立のQ&A

Q. 設立時の費用相場は?(法定費用・専門家報酬の内訳)

法定費用の目安(株式会社・新設)
・ 登録免許税:資本金×0.7%、最低15万円。
・ 定款認証手数料:原則5万円
(近年の改正で資本金100万円未満等の特定要件に該当すれば1.5万円/一部は3万円)。
・ 収入印紙:紙定款は4万円、電子定款は0円。

専門家報酬(目安)
・ 設立代行(司法書士):5万〜10万円程度。
・ スキーム設計(税務・契約含む):案件難易度により数十万円〜個別見積り
(株式評価・金融機関連携の有無で大幅変動)。

維持費
・ 顧問料、登記・税務申告等の年次コストを想定(グループ規模に比例)。

Q. 準備から完了まで、どのくらいの期間?

タイムライン(目安
・ 企画/設計:1〜3か月(スキーム設計、資金調達計画、専門家との打ち合わせ 。)
・ 設立準備(定款・口座等):2〜3週間
・ 設立登記:申請後1〜2週間で登記完了の目処
・ 株式買取・融資実行・配当設計:1〜2か月
⇒ 総所要:おおむね3〜6か月(株式移転や多数株主調整があると延伸)

Q. 誰に相談すればよい?(役割分担と選び方)

・ 税理士:株式評価、事業承継税制の適用可否判定、シミュレーション。
・ 司法書士:設立・株式移転・組織再編の登記実務。
・ 弁護士:株主間契約/相続・遺留分、労使・取引先対応の法的リスク。
・ コンサルタント: M&A戦略との連動や、承継後のグループ経営体制の構築など。

持株会社のその他の留意点

遺留分に関する民法の特例制度

遺留分に関する民法特例』という制度があります。
相続(贈与)で引き継ぐ自社の株式が、遺留分を算定する『遺留分算定基礎算定財産』から除外される(算定に含み入れない)合意(『除外合意』)と、
相続(贈与)で引き継いだ自社の株式を、合意時点での時価評価額で固定する(固定合意)があります(身内で合意すれば良いわけではなく、税理士や弁護士等の証明が必要な点に注意が必要です)。

このような制度を活用することが可能なため、遺留分への対応のために、必ず売買が必要なわけではありません。

事業承継税制は親族外でも活用が可能

事業承継税制は、贈与または相続によって株式が承継される場合に、相続税・贈与税の納税を猶予および免除される制度です。様々な理由から、贈与は親族外ではとりづらい選択肢かもしれませんが、制度上は親族外も活用可能となっています。

一般的な持株会社スキームは、創業者による株式の売却(株式譲渡)であり、創業者はその対価として現金を受け取ります。この取引には譲渡所得税が課されます。
[関連]事業承継計画とは?

株式等保有特定会社について

持株会社の総資産(相続税評価)に占める株式等の割合が50%を超えた場合は、基本的に『株式等保有特定会社』に該当します。
持株会社の場合、該当する可能性が高いと考えられますが、該当した場合には、株式の評価方法が変わることになるため、その影響を含めた長期的な目線での検討が必要です。

論点が多岐に渡る事業承継に対応するために

事業承継に際する持株会社を活用した株式の承継方法をまとめました。
持株会社を活用する場合には、税理士を交えた計画的かつ慎重な検討が重要です。
また、メリットとデメリットで見た通り、各ポイントが相互に影響するうえ、主体者・時期・基準によっても、どれが最適な選択肢かが変わってしまうこともあります。

さらには、『株式の問題』は重要ですが、事業承継においてはあくまでも一つの要素にすぎません。
実際に、事業承継は局所的な対応や準備不足に陥りやすいのが実情であり、いまだ有効な解決策が普及しているとは言い難い状況です。

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宇納 陽一郎

グランド・デザイニング・グループ代表。早稲田大学卒業後、野村證券にて営業・投資銀行業務に従事した後、日清食品にて経営企画・M&Aに従事。その後、PE投資会社にて複数社での事業承継および新体制構築を経験。経営や事業承継の実体験を活かした事業承継支援を提供。㈱ウォーターフロント代表取締役、㈱ナルネットコミュニケーションズ取締役等を歴任。

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