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小売業の分配率とは|利潤分配率・経費分配率・販促分配率・労働分配率などの意味と分析目的-GDGマガジン

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2025.07.01

小売業の分配率とは|利潤分配率・経費分配率・販促分配率・労働分配率などの意味と分析目的

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小売店の経営の羅針盤「分配率」とは?

小売店は、稼ぎ出した売上や利益を、人件費、販促費、商品の仕入れ費用といった様々なコストにどのように配分しているかを常に分析しています。
この「配分されている割合」を示すのが「分配率」です。

これらの分配率を理解することは、小売店の経営状況、課題、そして何を重視しているのかを読み解く鍵となります。主要な分配率は以下の4つです。

労働分配率: 人件費への分配を示す指標

不動産費分配率:不動産費用(賃借料など)への分配を示す指標

販促分配率: 販促費への分配を示す指標

利潤分配率: 粗利益をどれだけ利益転換できているかを示す指標

1. 労働分配率|付加価値の人件費への分配割合

小売店にとって、お客様への接客、商品陳列、在庫管理といった業務を担う従業員は、店舗の「顔」であり、お客様体験を左右する重要な存在です。従業員への対価である人件費は、特に人手不足が深刻化する現代において、小売業の経費の中でも大きな割合を占める重要なコストです。

労働分配率とは?

労働分配率とは、企業が生み出した付加価値(売上高から外部購入費用などを差し引いた、企業が独自に生み出した「価値」)のうち、どれだけが人件費(給与、賞与、法定福利費など)として従業員に分配されているかを示す指標です。この比率が高いほど、人件費の負担が大きい、あるいは従業員一人あたりの生産性が低いと見なされます。

労働分配率 = ( 人件費 / 付加価値額 ) × 100%

「付加価値額」の定義は複数ありますが、小売業の分配率計算においては粗利益を使うことが一般的です。

労働分配率が高い場合、人件費も高い水準ということでしょうか?
ここで改めて労働分配率の計算式を見てみましょう。
例として、人件費を50、付加価値額を100とした場合、労働分配率は50%ということになります。
次に、人件費を60、付加価値額を150とした場合、労働分配率は40%ということになります。
上記の場合、人件費の増加以上に付加価値額が増加しているため、労働分配率は逆に低下している状態です。労働分配率は付加価値に対してどれだけ分配したかの指標のため、必ずしも人件費水準の高低を意味するものではないことに留意が必要です。

小売業における労働分配率の目安

小売業の労働分配率は、業態やビジネスモデルによって大きく異なりますが、一般的に40%~50%前後が目安とされています。
人手不足による人件費高騰や、業務の非効率性は、労働分配率を高める要因となります。

「御社の人件費負担を実質的に軽減する」「作業効率を改善する」といった視点での提案はこの領域に対して効果があります。

なお、近年注目が集まっている労働分配率と、小売業における労働分配率は計算式がやや異なります。
詳細は以下の記事をご覧ください。

[関連]労働分配率とは?低い方がいいは本当?キーエンスと小売業の比較から業種別の特徴

2. 利潤分配率|粗利益から販管費・利益への分配割合

利潤分配率とは?(小売業における定義)

利潤分配率とは、小売店が商品を販売し、得た粗利益を、人件費、販促費、家賃などの販管費にどれだけ効率的に「分配」し、最終的な本業の利益として確保できたかを示す指標です。

小売業における「利潤分配率」は、粗利益(売上総利益)からどれだけ経常利益が残ったかを示す指標として多く用いられます。
※ 経常利益の代わりに、営業利益を使用することもあります。

利潤分配率 = ( 経常利益 / 粗利益 ) × 100%

小売業における利潤分配率の目安

小売業の利潤分配率は、一般的に15%~25%程度が目標値とされることがあります。
逆に言えば、粗利益の約75%~85%を販管費に「分配」しても良い、という考え方に基づきます。

粗利益の20%を営業利益として残すという目標が掲げられることも多く、この水準に満たない場合は、販管費のどこかに課題があると判断されます。

利潤分配率が低い小売店の場合、粗利益に対して販管費が過大にかかっており、本業でなかなか利益が残せていない可能性があります。

「御社の平均粗利率を改善する」「高い回転率による優れた棚効率」「高いロイヤリティによる既存顧客のリピート率の向上」「廃棄ロスの少なさ」といった視点での提案はこの領域に対して効果があります。

※『棚割り』、『セルイン・セルアウト』については、以下の記事もご参照ください。
[関連]棚割りとは?売上を最大化する本部商談の鍵と、店舗営業との決定的な違い
[関連]セルイン・セルアウト・セルスルーとは|それぞれの意味と、棚割り提案で重視するのはどれ?

3. 販促分配率|粗利率の販促費への分配割合

販促活動は、小売業の売上を左右する重要な要素です。
しかし、闇雲に費用をかけるだけでは、利益を圧迫してしまいます。小売店は販促費を単なるコストではなく、売上を増やすための「投資」と捉え、その費用対効果を厳しく見ています。

販促分配率とは?

販促分配率(または販促費率広告宣伝費率とは粗利益に対する販促費(広告宣伝費、販売促進費、Web広告費、チラシ費用など)の割合を示すものです。

販促分配率 = ( 販促費 / 粗利益 ) × 100%

ポイント引当金も販促費用として考慮

小売業において、お客様の囲い込みやリピート購買を促進するポイントプログラムは、重要な販促です。
ポイントは将来的な割引として販促費用に繋がるため、会計上も「ポイント引当金」として負債に計上される場合があります。

2021年度から適用されている「収益認識に関する会計基準」では、ポイント付与は「契約負債(顧客から受け取った対価のうち、まだ役務を提供していない部分)」として計上され、ポイントが使用された時点で、収益認識と同時に費用化されます。

小売業における販促分配率の目安とメーカー営業が知るべきポイント

小売業の販促分配率は、業種、競争環境、ターゲット層、販売戦略によって大きく異なります。
例えば、新規出店時や認知度向上のための大規模なキャンペーンでは一時的に高くなる傾向があります。

販促費率が高い小売店の場合、販促活動が売上に結びついていない、あるいは過剰な費用がかかっている可能性があります。

4. その他の経費分配率

人件費や販促費以外にも、小売店を運営していく上で、地代家賃、水道光熱費、物流費など、様々な経費がかかります。
これらの費用が売上に対してどれくらいの割合を占めるかを把握することは、効率的な店舗運営に繋がります。

経費分配率とは?

経費分配率とは粗利益に対する様々な経費項目の割合を示す総称です。
経費は、小売店の損益計算書における「販売費及び一般管理費」を構成する各費目が該当します。

① 不動産費分配率

不動産費分配率は、粗利に対する賃借料などの不動産費用の割合です。
固定費として小売店にとって重い負担です。

大型店の強みは、単位面積あたりの投資額を低減させられることですが、近年は不動産費用が増大する傾向もみられます。

{ 賃借料 + 共益金 + 減価償却費 + ( 保証金・権利金・敷金・土地・建物 )× 8% } ÷ 粗利

② 水道光熱費率

水道光熱費率は、粗利に対する店舗の電気代、ガス代、水道代の割合です

③ 支払手数料率

支払手数料率は、粗利に対する支払手数料クレジットカード決済手数料、ECサイトの手数料、外部委託費用など)の割合です
キャッシュレス決済の普及により、近年この比率の重要度が増しています。一方で、当該手数料を無くして、販売価格に反映するケースもあります。代表的なのが、現金支払のみのタイプです。

5. その他の経営効率指標

原価率(売上原価率)

定義:売上高に対する商品の仕入れコストの割合。小売店にとって最も基本的な収益性の指標です。

小売業の目安
業種により大きく異なり、食品スーパーは約70%~75%と高め、アパレルや雑貨は40%~60%と低い傾向にあります。
ドラッグストアがスーパーマーケット化する場合、これらのミックスがスーパー専業よりも高くなりがちです。

メーカーとしては、下代(値入率)の競争力、そうした競争力ある高値入商品の拡販による売上ミックス最適化などの提案がこの領域です。

分配率の理解は、小売店との「共通言語」になる

メーカーの営業担当者にとって、小売店の「分配率」を深く理解することは、単なる知識にとどまりません。
小売店の経営層やバイヤーが何を重視し、どのような課題を抱えているのかを深く理解するための「共通言語」であり、同じ目線で経営課題を議論するための重要な「視点」です。

(ご参考)コスモス薬品およびトライアルの数値

人件費:コスモスは表に記載の数値合計、トライアルは役員報酬・従業員・パート・アルバイトの給与・賞与, 法定福利・福利厚生費、交通費、教育研修・採用費、出向人件費合計

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