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セルイン・セルアウト・セルスルーとは|それぞれの意味と、棚割り提案で重視するのはどれ?-企業成長支援- GDG

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2025.06.29

セルイン・セルアウト・セルスルーとは|それぞれの意味と、棚割り提案で重視するのはどれ?

売上を最大化するセルインとセルアウト、そしてセルスルー率とは?

本記事では、「セルイン」「セルアウト」「セルスルー」の意味とその重要性を分かりやすく解説します。そして、これらの概念を棚割り提案にどう落とし込み、メーカーが小売企業との「ウィンウィン」の関係を築き、最終的に自社の売上を最大化していくための考え方についてみていきます。

セルイン・セルアウト・セルスルーの意味

「セルイン(Sell In)」とは?|メーカーの売上

セルインとは、メーカーが商品を卸売業者や小売店に販売・納品することを指します。

メーカーにとって、セルインは文字通り自社の売上を確保することです。また、リピート受注を獲得するためにも、「まずは商品を棚に並べてもらわないと始まらない」という考え方は、このセルインの重要性に基づいています。

「セルアウト(Sell Out)」とは?|小売店の売上

セルアウトとは、小売店が商品を消費者(エンドユーザー)に販売・納品することを意味します。つまり、お店のレジで商品がお客様の手に渡り、代金が支払われたら「セルアウト完了」となります。

小売店からすれば、商品を仕入れても(メーカーから見たセルイン)、それが売れなければ「在庫」のままで売上にはなりません。小売店にとっての売上は、お客様が商品を買ってくださったセルアウトの時点なのです。

「セルスルー(Sell Through)」とは?|販売の効率性を示す指標

セルスルー、あるいはセルスルー率とは、小売店に納品された商品が、どのくらいの割合で消費者に販売されたかを示す指標です。

例えば、お店に100個納品して、一定期間に80個売れたなら、セルスルー率は80%です。この数字が高いほど、お店の棚での売れ行きが好調であり、効率的に商品が回転していることを意味します。小売店が効率的に商品を販売できているかを測る重要なKPI(重要業績評価指標)となります。

メーカーの「売上」と小売の「売上」のギャップ

ここで重要なのが、メーカーと小売店の「売上」に対する視点の違いです。

上述の通り、メーカーはセルインで売上が立ちます。つまり、商品がお客様の倉庫や店頭に届けば、とりあえず自社の目標は達成されたと考える傾向にあります。

しかし、小売店はセルアウトで初めて売上が立ちます。いくらメーカーがセルインを達成しても、お店の棚で売れ残ってしまえば、小売店にとっては仕入れコストだけがかさみ、損失につながってしまいます。

「店頭への配架が出来れば良い」は、残念ながらメーカー都合の考え方です。一度納品したら終わり、というスタンスでは、小売店との長期的な信頼関係を築くことはできませんし、やがてつけが回ってきます。

※なお、小売店との取引形態には、店頭で商品が売れて初めて仕入として計上される「消化仕入(または委託販売)」というケースもあります。この場合、小売店は在庫リスクを抱えにくく、メーカーが実質的に在庫リスクを負う形になります。ただし、消化仕入であっても、売れ残りはメーカーにとっては機会損失となり、小売店にとっても魅力的な売場作りができないという点で、やはり「セルアウト」への意識が極めて重要であることは変わりません。

セルインの重要性:フィジカル・アベイラビリティの確保

「棚に置かれなければ、売れるはずがない」のが現実です。まずは商品を市場に送り出すセルインが重要であることは間違いありません。これは「フィジカル・アベイラビリティ(物理的な入手可能性)」の確保でもあります。どんなに素晴らしい商品でも、お客様の目に触れる場所に置かれていなければ、売れるチャンスすらありません。

セルインを成功させるためには、小売店の本部商談は非常に重要になります。

自社商品の魅力だけでなく、その商品が小売店の売上やお客様の満足度向上にどう貢献できるのか、具体的なデータや企画を持って提案することが求められます。戦略的なセルインは、メーカーのビジネスに新たな活気をもたらし、自社商品の市場浸透を可能にします。

セルアウトの重要性:売上実績と在庫回転率への影響

しかし、メーカーにとってセルインは「スタートライン」に過ぎません。セルアウトこそが、自社と取引先の真の成功指標であり、ビジネスが持続的に成長するための鍵となります。

セルアウトの動向は、小売店の売上実績に直結し、さらに在庫回転率にも大きな影響を与えます。在庫回転率が高いということは、商品が効率よく売れ、お店の資金繰りもスムーズであり、メーカーにとってもリピート発注が期待可能である状態を意味します。

もしセルアウトが悪いと、どうなるでしょうか?

  • 小売店の売上低迷
    せっかく仕入れていただいた商品が売れず、お店の売上に貢献しません。
  • 不良在庫の発生
    小売店側の不良在庫となるだけでなく、自社で生産した商品も長期間残ることで、倉庫を圧迫し、管理コストもかかります。
  • 差し替えのリスク
    売れない商品は、新しい商品との差し替え対象となり、棚から撤去されてしまいます。これはメーカーにとって大きな痛手です。
  • 売場効率の低下
    小売店にとっては、潜在的な損失にもつながってしまいます。例えば、本来ならもっと売れるはずのAという商品が置ける場所に、あまり売れないBという商品が居座り続けることで、小売店はその分の売上機会を失ってしまうのです。

つまり、セルアウトが振るわないと、メーカーと小売店の双方にとって「ウィンウィン」の関係が崩れてしまうのです。

「売れているから良い」は錯覚:セルアウトを踏まえた対応と棚割り提案を

「売れているから、このままで良いだろう」と考えてしまいがちですが、それは大きな錯覚かもしれません。目先のセルインは良くても、実はセルアウトが低迷し、お店に在庫が積み上がっている可能性もあります。

このような状況で、漫然と同じ棚割り提案を続けていると、いずれ棚からの撤去や、小売店からの信頼失墜につながります。

真に効果的な棚割り提案をするためには、セルアウトのデータを分析し、活用することは不可欠です。

  • どの商品が、いつ、どこで、どれくらい売れているのか?
    お客様はなぜその商品を選んだのか、あるいは選ばなかったのか?
  • カテゴリー全体や競合商品はどう動いているのか?

これらの情報を踏まえ、「売れている商品をもっと売るにはどうするか」「売れていない商品をどう改善するか」という視点で、棚割りや販促策を戦略的に提案する必要があります。セルアウトのデータは、お客様の課題を解決し、共通の目標である売上向上を実現するための強力な武器となるのです。

※棚割りの記事は以下についてもご参照ください。

セルイン・セルアウトで棚割り提案を強くする

「セルイン」で物理的な商品を供給し、「セルアウト」でその商品がお客様の手に渡る。この「セルスルー」までの一連の流れを深く理解し、特にセルアウトのデータを重視した棚割り提案を行うことは、消費財ビジネスにおいて非常に重要です。

単に商品を納品するだけでなく、その商品が店頭でいかに売れるかまで責任を持つ姿勢は、小売のお取引先からの信頼、ひいてはメーカーのビジネスを長期的に成長させる原動力となります。

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