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事業承継 # 後継者

「跡継ぎ」と「後継ぎ」の違いとは?後継者がいない会社の深刻な現実と事業承継の課題

更新日 : 2025.05.17

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事業承継、最初の疑問にお答えします

日本全国の中小企業で「跡継ぎがいない」という問題は深刻化しています。中小企業庁の調査によると、約3割の企業が後継者不在のまま次の経営者を決められず、最終的に廃業に至るケースも少なくありません。多くの経営者の皆様が「後継者を探さなければ」と感じながらも、何から手をつけていいか分からず、時間だけが過ぎていく現実があるのではないでしょうか。

この記事では、「跡継ぎ」の定義から、後継者問題を巡る具体的な課題、準備のステップ、成功・失敗事例、そして適切な後継者がいない場合の選択肢までを分かりやすく解説します。貴社の会社を未来へ繋ぎ、次の世代がさらに発展できる「礎」を築くための具体的なヒントと解決策を提供します。

跡継ぎとは何か?

まず「跡継ぎ」という言葉は、伝統的に「家督を継ぐ者」という意味合いで使われてきました。それは事業だけでなく、その家の財産や地位、伝統といった「家そのもの」を引き継ぐという色合いを帯びています。そのため、歴史のある同族経営の会社などでは、今でも「跡継ぎ」という表現が自然に使われることがあります。「家督を継ぐ者=長男」が典型でしたが、現代では少子高齢化や家族観の変化もあり絶対的ではなくなりました。

後継ぎとは何か?

「後継ぎ」は事業や地位・役職など広く前任者の後を継ぐ意味で使われ、必ずしも親族相続に限りません。例えば社内で役職を引き継ぐ場合や、師弟関係で技術を受け継ぐ場面では「後継ぎ」という言葉が用いられます。

後継者とは何か?

現代のビジネスシーン、特に事業承継の文脈で一般的に使われるのが「後継者」です。会社の役員や従業員、あるいはM&Aによって社外の第三者が事業を引き継ぐ場合も、「後継者」と呼ばれます。

結論として、現代の事業承継においては、跡継ぎや後継ぎ、そして後継者は「次の経営を担うリーダー」というほぼ同義の言葉として使って差し支えありません。しかし、言葉の背景にあるニュアンスの違いを理解しておくことは、ご自身の承継に対する考えを整理する上で役立つでしょう。

後継者不在が招く、3つの深刻な現実

「後継者がいない」という事態は、単に「会社を閉めればよい」という単純な話では済みません。それは、一つの企業の枠を超え、社会全体にとって計り知れない損失をもたらすドミノ倒しの始まりとなり得ます。

その第一の衝撃は、「黒字廃業」という、あまりに勿体ない結末です。中小企業庁の調査によれば、経営者の平均引退年齢とされる70歳を迎える企業の約半数が、後継者を決められていません。そして最も衝撃的なのは、業績が好調で黒字経営であるにもかかわらず、後継者が見つからないという理由だけで廃業を選択する企業が後を絶たないという事実です。

価値ある事業そのものが失われる時、第二の損失として、技術・ノウハウという「見えざる資産」が散逸します。長年の経営で培われた独自の製造技術、特別なレシピ、顧客との強固な信頼関係、そして組織に根付いた企業文化。これらは財務諸表には現れない、その会社だけの魂とも呼べる資産です。後継者がいなければ、この魂は誰にも引き継がれることなく、文字通りこの世から消えてしまうのです。

そして、その影響は社外へと波及し、地域経済とサプライチェーンへの打撃という第三の現実を引き起こします。特に地方において、一社の中小企業が地域経済や雇用に果たしている役割は絶大です。その会社が廃業すれば、地域全体の活力が失われるだけでなく、その会社と取引のあった全国のサプライチェーン(供給網)にも影響が及び、連鎖的な経済の停滞を招くリスクさえはらんでいます。

経営者の高齢化が進む日本では、平均年齢がすでに60歳を超え、多くの企業で経営者が退任直前まで後継者を決められないまま時間が過ぎています。その結果、業績が黒字であっても後継者不在によって廃業に至るケースが増え、地域経済にとっても大きな損失となっています。こうした背景から、「跡継ぎ問題」は単なる個人的な課題ではなく、企業存続ひいては日本経済全体に直結する、喫緊の経営課題となっているのです。

なぜ、これほど重要な「跡継ぎ問題」が解決しないのか?中小企業が直面する課題

では、なぜこれほど深刻な事態が、多くの企業で放置されてしまうのでしょうか。その背景には、中小企業が直面する、根深い課題の数々が複雑に絡み合っています。

まず、多くの場合、現経営者という存在そのものが「高すぎる壁」となっています。オーナー経営者ご自身が持つ卓越した経営手腕や人脈、カリスマ性を、今の役員や従業員が超えるのは難しいと感じてしまう。また、経営者自身も「自分以上にこの会社をうまく経営できる者はいない」という自負と強い責任感から、バトンを渡す最後の決断ができずにいるのです。

たとえ有望な後継者候補がいたとしても、候補者本人による「承継拒否」という壁が立ちはだかります。事業の将来性への不安、多額の借入に対する個人保証の重圧、そして失敗できないというプレッシャーから、候補者本人がその重責を担うことを辞退してしまうケースは少なくありません。

さらに、話が進んだとしても、株式や資産を巡る「経済条件の協議」が事態を頓挫させることもあります。株式の評価額を巡って現経営者と後継者候補との間で意見が合わなかったり、複数の親族がいる場合に財産分与を巡って感情的な対立が生じたりと、お金の問題は人間関係に時として亀裂を生じさせます。

これらの内部の問題に加えて、社内外からの「心理的な抵抗」も無視できません。新しい後継者に対し、古参の従業員が「自分たちのやり方が否定されるのでは」と反発したり、長年の取引先が「新しい社長で本当に大丈夫か」と取引に慎重になったりと、変化に対する抵抗勢力が、円滑な承継を阻む見えざる壁となるのです。

課題の正しい認識が、解決への第一歩

ここまで、「跡継ぎ」と「後継ぎ」の言葉の定義から、後継者不在がもたらす深刻な現実、そしてその背景にある根深い課題について詳しく解説してきました。

もし、これらの課題のいずれかに「自社のことかもしれない」と感じられたとしても、決して悲観する必要はありません。課題を正しく認識することは、解決に向けた最も重要な第一歩です。

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監修者

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宇納 陽一郎

グランド・デザイニング・グループ代表。早稲田大学卒業後、野村證券にて営業・投資銀行業務に従事した後、日清食品にて経営企画・M&Aに従事。その後、PE投資会社にて複数社での事業承継および新体制構築を経験。経営や事業承継の実体験を活かした事業承継支援を提供。㈱ウォーターフロント代表取締役、㈱ナルネットコミュニケーションズ取締役等を歴任。

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