棚割りとは?売上を最大化する本部商談の鍵と、店舗営業との決定的な違い-企業成長支援- GDG
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2025.06.29
棚割りとは?売上を最大化する本部商談の鍵と、店舗営業との決定的な違い
皆様の会社では、自社の商品がどのように小売業の店頭に並べられているか、どれくらいのスペースを占めているか、意識されているでしょうか。 「良い商品なのに、なかなか全国規模で売れない」「本部との商談の機会がそもそもない」といった課題を感じている方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、そんなメーカーの皆さんに向けて、小売業への商談で重要な「棚割り」について、基礎から具体的な本部商談での重要性まで詳しく解説していきます。
1. 棚割りとは?売場づくりの「設計図」
「棚割り(たなわり)」とは、店舗の売り場において、「どの商品を (What)」 、「どの場所に (Where)」、「いくつ (How many)」、陳列するかを計画することを指します。
単に商品を並べるだけでなく、お客様の購買意欲を刺激し、売上を最大化するための戦略的な配置図と言えます。スーパーマーケットやドラッグストア、ホームセンターなど、あらゆる小売店でこの「棚割り」は売上を大きく左右する重要な要素と位置付けられています。
店舗規模・地域・お客様特性を踏まえ、カテゴリーや商品などに関する過去の売上実績や生活者トレンドなどを分析しながら、年間あるいは季節ごとに複数の棚割りパターンを決定していきます。
この棚割り計画を視覚的に表現したものが、「棚割表(プラノグラム)」です。いわば「売場の設計図」であり、どの棚のどの位置に、どの商品を、何フェイス(商品を陳列する数)置くかが具体的に示されています。
2. 棚割りの究極の目的:売上と顧客満足の最大化
小売店が棚割りを重視するのには、明確な目的があります。
- 売上・利益の最大化:
最も重要な目的です。お客様にとって買いやすく、魅力的な売場を作ることで、購入点数や客単価の向上を目指します。単に商品を陳列するということではなく、お客様の購買行動を分析し、自社店舗のオリジナル価値を訴求するために、商品を戦略的に配置し、売上を左右する重要な要素です。 - 顧客満足度の向上:
目的の商品を見つけやすくしたり、関連商品を近くに配置したりすることで、お客様の買い物体験を快適にします。 - 在庫の最適化:
売れる商品を適切な量で陳列し、死に筋商品を減らすことで、過剰在庫を防ぎ、機会損失を最小限に抑えます。 - ブランドイメージの構築:
特定のブランドやカテゴリーを強調することで、お店全体のブランドイメージや専門性、オリジナリティを高めます。 - 作業効率の向上:
商品の補充や管理がしやすい棚割りにすることで、店舗スタッフの作業負担を軽減します。
このように、棚割りは単なる作業ではなく、小売店の経営戦略そのものと言っても過言ではありません。
3. 棚割りの種類と役割:定番棚、アウト展開、スポット展開
棚割りにはいくつかの種類があり、それぞれ異なる目的と役割を持っています。メーカーの営業担当者は、これらのうちどこをとりに行くか(希望)、取りに行けるか(勝算)を計画したうえで提案が必要です。
定番棚(ていばんだな・ていばんたな):
常に同じ場所に同じ商品が陳列されている、売場の“顔”となる棚です。
目的は、お客様に安心感を与え、購入頻度の高い商品を確実に提供すること。ここに採用されれば安定した売上が見込めますが、入れ替え提案は容易ではありません。
店舗面積に応じたゴンドラ数の前提も重要です。例えば、定番が取れていると思っていたら、ごくわずかな店舗が扱う「ゴンドラ3本パターン」で自社商品が採用されており、大半の店舗で展開されるゴンドラ1本パターンでは実は採用されていない、というケースも多くあります。
アウト展開(アウトてんかい):
定番棚以外の場所(通路側のエンド、レジ横、特設コーナーなど)に商品を陳列することです。季節商品や新商品、セール品などが対象になります。
目的は、お客様の目に留まりやすくすることで、衝動買いや買い忘れの防止、あるいは来店促進を図ること。定番棚より柔軟な提案が可能です。
スポット展開(スポットてんかい):
アウト展開の中でも、特に短期間で集中的に商品を陳列する形態です。キャンペーン期間中やイベントに合わせて行われます。目的は、特定の期間に大きな売上を作ったり、ブランド認知度を一気に高めたりすること。しかし、期間が短く、計画的な提案が求められます。
4. なぜ本部棚割りが重要なのか?メーカーが目指すべき次の一手
雑貨・食品・菓子・消費財などのメーカーにとって、重要になるのが「本部棚割り(ほんぶたなわり)」です。
本部棚割りとは、小売チェーンの本部が一括して、全店舗または特定の店舗群に対して行う棚割りの決定を指します。バイヤーや商品部が、膨大なデータとトレンド分析に基づいて、どの商品を、どのカテゴリで、どれくらいのスペースで展開するかを決定します。
メーカーにとっての本部棚割りの重要性は、一度本部棚割りに採用されれば、全国の数十店舗、数百店舗で一斉に自社商品が展開される可能性があることです。店舗個別の交渉では到達できない規模の売上とブランド認知度を、一挙に獲得できるチャンスとなります。
棚割りは、トレードマーケティングという考え方の一部でもあります。トレードマーケティングとは、メーカーが小売店と協力し、売上を最大化するための戦略的な活動全般を指します。本部棚割りはその中でも特に重要な要素の一つであり、単なる陳列を超えた深い意味を持つのです。
5. なぜ小売は本部棚割りを重視するのか?小売側のビジネス視点
小売チェーンが本部棚割りを重視し、中央集権化を進める背景には、明確なビジネス上の狙いがあります。近年、業界再編による小売企業の大型化や、生産性向上の流れなどにより、小売企業による「中央集権型のマーチャンダイジング(品揃えや販売促進の管理)」が日常的になっています。
小売側が本部棚割りを行う具体的な目的は以下の通りです。
- 店舗業務軽減と全体生産性向上:
本部が一括管理することで、各店舗の棚割り作業や発注作業の負担を大幅に減らし、会社全体の生産性を高めます。 - データに基づいた発注精度向上:
本部が持つ膨大な販売データや市場トレンドを詳細に分析し、より最適な棚割りを構成することで、在庫の適正化と欠品・過剰在庫の防止を図ります。 - 一括仕入れによる価格交渉力強化:
多数の店舗分を本部でまとめて仕入れることで、メーカーや卸に対する交渉力を高め、仕入れ価格を抑えることができます。 - 物流費用低下とEC対応の促進:
全店共通の物流センターへ在庫を集約・保管・出荷することで、物流コストを低減し、効率的なサプライチェーンを構築します。これは、EC事業との連携においても重要な基盤となります。
これらの目的は、在庫回転率の向上、値入率の向上、生産性の向上、そして販管費の削減といった、小売業の共通テーマに直結しています。
また、近年は小売のプライベートブランド(PB)比率の増加も顕著です。
プライベートブランド(PB)とは、小売企業が自社で企画・開発し、メーカーに製造を委託するオリジナル商品のことです。PBが増えることで、メーカーにとっては製造受託という新たなビジネスチャンスが生まれる一方で、ナショナルブランド(NB)の棚スペースが縮小する可能性も考慮する必要があります。プライベートブランドの対象を検討する小売業にとっては、本部一括棚割りのほうが、どの商品が本当に売れるかのデータが取りやすいという利点もあります。
さらに、多くの小売企業が複数の店舗フォーマットを展開するマルチフォーマット戦略も一般的になっています。これにより、地域特性や顧客ニーズに応じた適切な店舗展開が可能となりますが、本部での一元管理の重要性がさらに増しているのです。
6. 店舗営業との決定的な違いと、中小企業における本部商談の必要性
雑貨・食品・菓子・消費財などを企画・製造・卸売りする中小中堅企業の皆さんの多くは、普段の営業活動で「店舗営業」が主体になっているケースも多くみられます。
店舗営業とは、個々の店舗を訪問し、店長や売り場担当者と直接交渉して商品を導入してもらったり、売場を広げてもらったりする営業スタイルです。
きめ細やかな対応ができ、店舗との関係性を深めやすいというメリットがあります。
しかし、店舗営業には限界があるのも事実です。
- 手間と時間がかかる:
多くの店舗を回るには膨大な労力と時間が必要です。将来的な人材採用難も見据えた事業形態の検討も必要です。 - 売上の上限がある:
個店での売上は大きくても、その店舗の規模に依存します。 - 横展開の難しさ:
ある店舗で成功しても、他の店舗への展開は保証されません。また、バイヤーの異動にも影響を受けます。 - 本部の意向に左右される:
結局は本部の棚割りの枠内でしか動けず、大きな変更は難しいのが現実です。
「商品には自信があるのに、なかなか売上が伸びない」「もっと多くの店舗で扱ってほしい」と感じているなら、それは本部商談、特に本部棚割りを意識した営業戦略が不足しているからかもしれません。
本部商談は、個店の担当者とは異なる視点や判断基準を持つバイヤーや商品部が相手になります。彼らの視点を理解し、彼らが求める情報を的確に伝えることができれば、ビジネスは飛躍的に拡大する可能性を秘めているのです。
特に、「全国への配荷」は、生活者が実際に商品を手に取りやすい、または購入しやすい環境を生み出します。これはフィジカルアベイラビリティと呼ばれますが、全国への配架による売上アップだけでなく、ブランドの認知自体を抜本的に引き上げるという意味で、波及効果が大きいといえます。
本部商談は、大手メーカーだけの施策ではありません。中小企業でも取り組みにより、大きな成果を創出することが可能であり、実際の事例も豊富に存在しています。
次の記事では、実際に本部商談で棚割りを提案する際の具体的なポイントについて解説します。
〉本部商談における棚割り提案:メーカーが売上を伸ばすための実践的アプローチ
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