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プロダクトミックスとは?企業の利益を最大化する製品戦略の基本 – 意味・計算・使い方・企業例まで解説

更新日 : 2025.08.15

GDGマガジン|中堅/中小企業経営者のためのビジネスメディア

企業が「どの商品を、どれだけ、どのように組み合わせて提供するか」。それを戦略的に設計・管理する指標が「プロダクトミックス」です。単なる商品ラインナップではなく、顧客ニーズへの対応、利益最大化、ブランド価値の強化、営業・マーケティングの連動に欠かせない“経営戦略の軸”でもあります。

図解:

プロダクトミックスとは

プロダクトミックスとは、企業が提供するすべての製品やサービスの組み合わせ全体を指します。
この組み合わせを分析するために、プロダクトミックスには4つのキーワード (構成要素) があります。

プロダクトミックスの4つの構成要素

幅(製品ラインの数)

プロダクトミックスの幅とは、製品ライン (カテゴリー) の数を指します。
スキンケア、メイクアップ、ヘアケア、香水のカテゴリー展開があるとすれば、幅は4です。

幅が広いほど、複数の市場セグメントにアプローチしていることを示します。多様な需要に対応できる反面、管理やマーケティングの難易度も上がります。

※製品ラインとは、機能が類似している、同じ顧客層に販売される、同じ流通チャネルを通じて販売されるといった理由で密接に関連する製品グループのことです。例:スキンケアラインに含まれる「化粧水・乳液・美容液」など)

深さ(1ライン内のバリエーション)

プロダクトミックスの深さ (奥行) とは、1つの製品ラインにおけるバリエーションの数を指します (種類、サイズ、味など) 。スキンケアの化粧水ラインに、しっとりタイプ、さっぱりタイプ、美白タイプの3種類があれば、奥行きは3です。

奥行きが深いほど、1つの製品ライン内で多様なバリエーションを用意しており、細かいニーズに応えようとしていることを示します。ただし、過度なバリエーションは在庫管理や製造コストの複雑化を招きます。

プロダクトミックス - product mix

長さ(全アイテム数)

プロダクトミックスの長さとは、全製品のアイテム数を指します。スキンケアに化粧水3種、乳液3種、メイクアップに5種、ヘアケアに4種、香水に2種の商品があれば、長さは17です。

幅と奥行きを積み重ねた結果として、全体で扱うアイテム総数はいくつか?という長さが算出されます。長いほど、品揃えが豊富でニーズへの対応力があることを示しますが、同時に在庫リスクや管理負担も増加します。

一貫性(製品群の関連性)

プロダクトミックスの一貫性とは、製品同士がどれだけ関連しているかを指します。
関連性には、生産技術や流通チャネルなどがありますが、一貫性が高い場合、企業は特定の分野における専門家としてのブランドイメージを構築しやすく、生産やマーケティングにおけるシナジー (相乗効果) を享受できます。

これら4つは独立しているわけではなく、相互に影響し合います。例えば、幅を無秩序に広げると、一貫性が損なわれ、ブランドイメージが希薄化するリスクがあります。逆に、奥行きを深く追求することは、特定の製品ラインへのリソース集中を意味します。

企業のプロダクトミックス戦略は、これらをどのようにバランスさせるかという経営判断であり、商品や企業の市場におけるポジショニング、財務状況、生産能力などによって設定されます。

プロダクトミックスの目的と効果

プロダクトミックスの最上位の目的は、「企業利益の最大化と持続的成長」です。目的を達成するために、以下の要素を踏まえて最適にコントロールします。

顧客ニーズへの対応と収益機会の拡大

価格帯、機能、品質の異なる製品を組み合わせることで、多様な顧客セグメントのニーズを捉え、市場カバー範囲を拡大します。これにより、新規顧客の獲得、クロスセル・アップセルによる顧客単価の向上、ワンストップ提供による顧客流出の防止といった、多角的な収益機会を創出します。

②経営基盤の安定化とリスク分散

時間軸や市場環境の変化に対応し、経営の安定性を高めるための目的です。
導入期・成長期の製品で将来の成長を狙う一方、成熟期の製品で安定したキャッシュフローを確保するなど、異なるライフサイクルの製品を組み合わせることにより、特定製品の不振や市場の衰退が企業全体への影響を緩和し、リスクを分散させます。

ブランド価値の構築と強化

例えば高品質な製品はブランド全体のイメージや信頼性を高め、手に取りやすい価格帯の製品はより多くの人にブランドを知ってもらうきっかけとなります。このように、各製品が持つ役割を通じて、ブランド価値全体の構築と強化に貢献します。

④経営資源の効率的な活用(シナジー創出)

関連性の高い製品ラインで統一された品揃えは、生産・開発・販売・マーケティング活動などのリソース共有を可能にし、企業活動全体の効率性と相乗効果を高めます。

[関連]プロダクトミックスを活かす販売「クロスセルとは?」

プロダクトミックスの使い方・分析の視点

how to win

プロダクトミックスは、単に製品ラインナップを管理するだけでなく、現状を客観的に評価し、戦略的な次の打ち手を導き出すために有用です。自社のプロダクトミックスを見直す際に、以下の視点から問いを立ててみましょう。

収益性の観点

・どの製品が本当に利益貢献しているか?
・利益貢献度が低い製品はどれか?なぜ残っているのか?
・売上は少ないが粗利率の高い製品は存在するか?
・逆に、売れてはいるが利益率の低い製品はないか?

顧客ニーズ・市場との適合性

・ニーズの変化に対応できているか?
・主力商品のバリエーションは、顧客のニーズに応えているか?
・製品ラインナップが特定のセグメントに偏っていないか?

販売戦略の観点

・売れ筋商品の組み合わせ方に工夫はあるか?
・クロスセルやアップセルの機会を最大化できているか?
・セット販売やパッケージ提案で単価を引き上げられないか?

競争戦略

・同業他社と比較したときの独自性はどこか?
・価格帯・使用シーン・品質などでホワイトスペースはないか?
・品揃えの抜けが、競合他社の参入余地になっていないか?

業務効率・管理コストの観点

・品揃えが多すぎて、営業活動の焦点が分散していないか?
・在庫管理・受発注・物流などの業務が複雑化し、コスト増を招いていないか?
・類似商品が競合してカニバリゼーションを起こしていないか?

将来のミックス(戦略的再構成)

・今後注力すべき製品はどれか?
・撤退すべき製品や、販売方法を見直すことで統廃合できるSKUはないか?
・新製品の導入余地はあるか?既存製品との関係性やバランスはどうか?

プロダクトミックスの最適化と利益貢献度

プロダクトミックスを最適化するには、製品ごとの「利益貢献度」まで踏み込んだ評価基準が不可欠です。
多くの企業では営業計画や実績管理を「売上高」を主軸に行いますが、それだけでは、会社に利益をもたらしている製品を正しく見極めることはできません。

「粗利(売上総利益)」や「限界利益(売上高-変動費)」を軸に製品ポートフォリオを再評価することで、売上高に惑わされず、本当に利益を生む製品や、逆に収益を圧迫している製品を客観的に把握できます。

こうした利益ベースの分析は、製品構成の見直しだけでなく、個別製品の利益率改善(価格・原価の見直し)、生産体制の最適化、さらには営業組織の評価基準の再設計にも繋がり、全社的なプロダクトミックス戦略の一体感を高めます。

損して得取れ?「ロスリーダー」などの戦略的な価格設定の例

プロダクトミックスの最適化では、単純に不採算製品をカットしたり、高単価商品に注力したりするだけでは、意図しない結果を招くことがあります。例えば、採算性のみを理由に集客効果のある商品をなくした結果、ECサイト全体のアクセスが激減し、他の商品の売上まで落ちてしまうケースです。

そこで重要になるのが、ポートフォリオ全体での利益最大化を目指す戦略的な価格設定です。

ロスリーダー戦略

販売活動において、意図的に利益率の低い製品を呼び水として活用するのがロスリーダーです。
例えば特定の商品を廉価で提供し、集客やセルインの目玉 (おとり商品) とし、当商品単体では低利益率あるいは利益が出なくても、顧客が他の利益率の高い商品も一緒に買ってくれること (クロスセル) で、結果的に全体の売上と利益を最大化します。これは短期的な集客を目的とした「点」の戦略と言えます。※セールスミックスについては後段を参照してください。

ベイト&フック戦略

似た概念として、ベイト&フックと呼ばれる販売があります。
ベイト (餌) となる本体 (カミソリ本体、ゲーム機など) を安価あるいは赤字で提供し、継続的に購入が必要な高利益率の消耗品や関連商品 (替刃、ゲームソフトなど) で長期的に利益を回収するモデルです。これは顧客との長期的な関係 (LTV) を前提とした「線」の戦略です。

いずれも「損して得取れ」の発想ですが、目的はあくまで企業利益の最大化です。「儲からない製品を売る」ことは目的ではありませんし、そうならない政策こそが営業戦略に求められます。個々の製品の損益だけでなく、ポートフォリオ全体で、あるいは長期的な視点でいかに利益を最大化するか。これこそが、プロダクトミックス戦略の大きなポイントと言えるでしょう。

ロスリーダーやベイト&フックによるLTV最大化の例

スーパーの特売卵
広告の品として、卵で赤字が出ても、顧客がその他の商品を買ってくれることで収益を得るモデル。

カミソリ本体と替刃プリンターとインク
カミソリ本体やプリンター本体を安く提供し、継続的に購入が必要な高利益率の「替刃」や「純正インク」で収益を得るモデル。

メンテナンスモデル
エレベーターや工場プラントを安価で導入し、その後のメンテナンスや追加的なカスタマイズ部品販売などで収益を得るモデル。

フリーミアム
ソフトウェアなどで、基本機能を無料で提供して多くのユーザーを集め、一部のユーザーが有料の高機能版にアップグレードすることで収益を得るモデル。

プロダクトミックスとセールスミックスとの違い

プロダクトミックスとセールスミックスは、どちらも製品に関する戦略的な指標ですが、焦点の当て方が以下のように異なります。

プロダクトミックス:企業が提供する製品の全ラインナップ
セールスミックス:実際に売れている、あるいは販売計画にもとづいた製品の売上構成

プロダクトミックスは「何を扱うか」という供給の設計図として、製品群のバランスやラインナップに注目します。セールスミックスは、「何が売れているか」に焦点を当て、各製品が売上にどの程度寄与しているかを、数量や金額ベースで分析します。

同じプロダクトミックスを持つ企業であっても、実際の販売状況や戦略によって、セールスミックスは大きく変動する可能性があります。言い換えれば、プロダクトミックスは供給の設計図、セールスミックスは需要の実績・計画レポートと捉えることができます。

指標 意味 焦点 活用目的
プロダクトミックス 企業が提供する製品・サービス全体の構成 「何を扱うか」(供給の設計図) 商品戦略・開発・ブランド管理
セールスミックス 実際に売れている製品の売上構成 「何が売れているか」(需要の実績) 営業戦略・施策評価・販売計画の見直し

戦略と実行をつなぐ「三位一体」運用

ここまで、プロダクトミックスにおけるポートフォリオ設計や、セールスミックスとの連動施策を見てきました。これらを、実行可能な施策として機能させるための「体制面での設計」に焦点を当てます。

なぜ戦略と実行は、ズレるのか?

プロダクトミックス戦略でよく直面するのが、「戦略と実行のズレ」です。
例えば、集客のために商品Aを安価に設定し、利益率の高い商品Bとの合わせ買いで収益を上げる、という戦略を描いたとします。しかし、営業現場では価格が安く「売りやすい」商品Aばかりが売れてしまうというケースは少なくありません。その結果、売上は立っても、想定していた利益が出ず、戦略と現実の乖離が生じます。

実際の成果は、競合の動きや顧客の反応、営業担当者のスキルやモチベーションなど、無数の変動要因に左右されます。計画通りにモノが売れることは稀であり、セールスミックスが当初の想定通りに推移しないのは、ある意味当然のことです。こうした「ズレ」を前提にしながら、それでも成果を出していくためには、「商品政策」「営業政策」「管理体制」の三位一体での運用が欠かせません。

ズレを乗りこなす「三位一体」の仕組み

商品政策においては、どの商品で集客し(フロントエンド)、どの商品で収益を上げるか(バックエンド)という役割分担を明確にすることが出発点となります。単に製品ラインを拡充するのではなく、利益構造を見据えた上で、価格設計や販売優先度の設計が求められます。

次に営業政策との連動です。営業チームが、各商品の役割や狙いを正しく理解した上で活動できるように、戦略意図は営業方針として明文化され、現場にまで浸透している必要があります。
また、売上額だけを追うのではなく、利益率や特定商品の販売状況などをKPIとして設定し、それに基づいた評価・インセンティブ制度を設計することで、現場の行動と戦略との整合性を促せます。

さらに、この一連の方針を支えるのが経営管理体制です。たとえば、商品ごとの販売数や利益率をリアルタイムで把握できるダッシュボードの整備や、実績と計画との差異を定期的にモニタリング・分析する仕組みがあれば、問題の早期発見と軌道修正が可能になります。

動かし続ける仕組み

重要なのは、これら3つの要素を単独で設計するのではなく、常に連動させて運用し続けることです。そして、PDCAサイクルを絶えず回しながら、状況に応じて調整する。この一連の仕組みを組織に定着させることが、プロダクトミックス戦略を実効性あるものに変えるカギとなります。

商品政策を「設計して終わり」にせず、営業現場と経営管理の双方で実態を捉えながら適時見直しを行う。このような継続的かつ連携した取り組みは、プロダクトミックスの価値を引き出すために欠かせない原動力です。

企業事例:日清食品のプロダクトミックス戦略

世界の食品業界を牽引する日清食品は、巧みなプロダクトミックスとユニークなクリエイティブの力でブランドを磨き続けることで、高い競争力と事業の安定性を築いてきた企業の好例です。1958年に世界初の即席めん「チキンラーメン」で市場を創造して以来、同社は革新を止めることなく事業領域を拡大。現在、そのポートフォリオは即席めん事業を中核としながら、チルド・冷凍食品、菓子、シリアル、飲料など多岐にわたり、私たちの食生活のあらゆる場面をカバーしています。

ブランドの拡張戦略としての完全メシ

なかでも近年注目されているのが、「完全メシ」ブランドの展開です。栄養バランス最適化を追求し、現代の健康志向や時短ニーズに応えるこのカテゴリは、単なる一商品群ではなく、「もう1つ日清食品ができるくらいの規模になる」とされるほどの将来的なスケーラビリティを備えた戦略事業とされています。

完全メシは、飲料・カップ麺・グラノーラ・パンといった既存フォーマットを活かしつつ、日清食品の最先端フードテクノロジーを投入。栄養素にありがちな苦味やクセを抑え、日常的な食事と変わらない美味しさと栄養の両立を実現しています。
このように、「完全栄養食」という新しい価値軸を打ち出すことで、従来とは異なる消費シーンやターゲット層を開拓しており、単なる商品追加にとどまらない、新たなプロダクトミックスの軸の形成に挑戦しています。

ミックスの広がりが生む成長エンジン

こうした革新は、日清食品を「即席めんの会社」にとどめず、“未来の食文化”を創出するオリジネーター企業へと進化させる原動力となっています。プロダクトミックスの拡張と深耕によって、ブランドの枠組みそのものを拡張する――それが、日清食品の成長を支える戦略的な動きといえるでしょう。

[出所1] 日清食品グループの商品一覧
[出所2] 「日清食品をぶっつぶせ」

プロダクトミックスを有効活用するために

「どの製品をどのように扱えば、最大の利益とブランド価値を生むか」を明らかにするプロダクトミックス。商品開発・営業・管理がバラバラにならないよう、全社一体で設計・実行・改善を重ねることで、大きな効果が期待できます。

さらなる企業成長のためには営業戦略と経営管理体制の構築が必要です。ぜひグランド・デザイニング・グループにご相談ください。無料相談をお受けしておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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宇納 陽一郎

グランド・デザイニング・グループ代表。早稲田大学卒業後、野村證券にて営業・投資銀行業務に従事した後、日清食品にて経営企画・M&Aに従事。その後、PE投資会社にて複数社での事業承継および新体制構築を経験。経営・営業・管理の実体験を活かした営業戦略や経営経営管理体制の構築支援を提供。㈱ウォーターフロント代表取締役、㈱ナルネットコミュニケーションズ取締役等を歴任。

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